潜入×ネタバレ×交渉

 

 

 

 

「やぁ。」

「おはよ。」

ヒソカは昨日約束したよりも少し早く部屋へとやってきた。

「おはよ。なぁヒソカ?」

「なんだい?」

「菜々実の事・・・」

キルアはヒソカを見るなり珍しく真剣なまなざしを向けた。

「大丈夫。不利になる事はしないよ。」

「・・・。」

「これでも僕菜々実とゴンは大事なんだよね。
菜々実との約束もあるからさ。」

「約束?」

「それは内緒☆」

人差し指を立てて口の前にあてた。

キルアは不安そうな顔で私を見ている。

「ヒソカに利益がないとね♪
大丈夫私も利益はあっても害はないよ。」

「十分一緒にいるのと旅団に入っただけで害じゃんか・・・。」

「あはははは・・・。
ごめんなさい。」

「まっ俺は連絡待ってるよ。」

「うん。頼りにしてます。」

私は笑顔でキルアに告げると少し恥ずかしそうに嬉しそうな顔をした。

「じゃー行こうか。」

「うん。じゃー行ってきます。」

私とヒソカはキルアに手を振ってホテルを後にした。



「予定より早いけどなんかあったん?」

「うん。団長が早めに来いって言ってるらしいからちょっと早いけど先に食事してから行こうか。」

私たちはヒソカのお勧めのピザ屋さんで食事を取るとアジトへ向かった。

「久し振り。」

アジトに入っるとシャルナークと団長、コルトピ・パクノダが既に来ていた。

「シャル・団長久し振り。
他の人ははじめまして。」

「お~お前か?新しく入ったってーのは?」

挨拶をした直後に後ろから声をかけられた。

「はじめまして、ウボォーさん、ノブナガさん。」

「お前がボノレノフを・・・。」

「申し訳ありません。入団するにはそのルールしかなかったので。」

「まー確かにな。」

ノブナガは少し私に殺気を向けたものの、しょーがないと言うとさっと普段の様子に戻った。

それから10分ほどして旅団全員がアジトに集合した。

「みんな揃ったな。」
 

団長は軽く私の紹介をした後今回の集合目的が地下競売である事を話した。

「あの、いいかな?」

団長の説明後、かなり気合の入った様子のウボォーさんには悪いけど、私は手を
挙げた。

「どうした菜々実?」

「その地下競売に行っても物はない。」


はっきりそう言い切った私に団員は皆目を見開いた。


「どう言う事?
日付も時間も場所も間違いはないと思うけど?」


下調べを終わらせているシャルは腕組みしながら真っ直ぐ私を見ていた。


「競売の開始前に陰獣の1人『烏』って奴が物を全部どこかに移動させる。」

「なぜだ?」


少し私に警戒しているのか、小さな殺気を団長から向けられる。

でもそんなくらいでどーとも思わない。


「ノストラードファミリーからの垂れ込みが入るから。
あそこには1ヶ月間の未来を予想する能力を持った人物がいるから。
その占いに地下競売が襲われるって出る。
だから十老頭は陰獣を使って物をどこかに隠す。」

「なぜお前がそれを知っている?」

「私も未来を知っているから。」


そう。私は未来を知っている。
これから何が起こるのか。


始めは黙っておくつもりだったけど、話してしまった方が分かりやすい。
そしてなにより自分の身も、クラピカの身も、私が守りたい者は守れるから。
ただそれだけ。


「それもお前の能力か?」

「能力?ちょっと違うかもしれへんけど。
でも確実に物はない。」


まっすぐ冷静に私は団長を見つめた。


「パク。
菜々実に触れ。」


団長の言葉に黙って足を進め私の前に立ったパク姉さん。


「どうぞ。この先起こる未来と、私の記憶、好きなだけ見ればいい。」


私はそう言ってパク姉さんにまっすぐ腕を差し出し目をつぶった。

そんな私の腕を掴んだパク姉さん。

どれくらいの時間をそうやっていただろうか?

優しく手を放され、私は目を開けるとパク姉さんは驚いた顔をして私を見つめていた。


「パク。」


固まっていたパク姉さんに団長が声をかけ、我に返ったパク姉さんは静かに私に背を向けた。


「嘘は言っていないわ。
予定通りに地下競売を襲えばウボォーと私が死ぬ。
そして団長が念能力を封じられる。」
「ね?」


パク姉さんの言葉に私はほらね?と首をかしげた。


「菜々実って言ったわね?
あなた……。」

「ええ、私はここではない世界から来た。
そして本当ならウボォーさんを殺し、パクさんが死ぬ原因を作るのは私の友人。
もちろん団長の念を封じるのも。」

「そりゃどーゆー事だ?」


私とパク姉さんの言葉にウボォーさんとノブナガが私に一気に殺気を向けた。


「言葉の通り。
でも私はウボォーさんにもパクさんにも死んで欲しくないし、友人に殺しをさせたくもない。
だから旅団に入った。」


向けられる殺気を無視し、ただ冷静に、落ち着いたままで言葉を返した。


そんな私の様子にヒソカはニヤニヤと嫌な笑いを浮かべている。

「あなた、ボノレノフを殺してないわね?」

「うん。出来れば殺したくなかったから。
でももし、ここにいれないなら私は今すぐ此処にいながらボノレノフを殺す事なんてすぐに出来る。
だってやりたい事が終わったら私蜘蛛には興味ないから。」

「ははは……あはははは!!!!」



私の言葉に突然シャルが大笑いを始めた。


「へ????」

「団長、俺はいいと思いますよ。
菜々実がこのままここにいれば物は手に入るし、誰も被害は出ない。
でしょ?」

シャルからウインクを投げられて私は一瞬赤面してしまった。


「僕も賛成。
その為に菜々実を推薦したんだから。」

「パクが本当だって言うんなら本当なんだし、私はとりあえず団長に従うだけ。」


マチからの一言に団長も少し表情を緩めた。



「そうだな。だが条件が1つある。」

「条件?」

「ボノレノフを解放しろ。」

「わかった。……青龍戻って。
解放したで。数分でここにもどるんじゃない?
本人には言ってあるから。
そーそー。
団員じゃなくて、協力での非常勤要員って事ならこっちからも協力する分の報酬ってもらえる?
無理ならここにいる全員殺して奪ってもいいんやけど。」

私は一気に錬で練りだしたオーラを放出し、その状態から四聖獣を呼び出した。
そしてありったけの殺気を放った。

その瞬間に身を引いたのがマチ・シズク・コルトピ

逆に戦闘態勢に入ったのがフランクリン・フェイタン・ノブナガ・ウボォー・フィンクス

微動だにしない団長・シャル・パク姉さん
そして面白そうに見ているヒソカ

「いいだろう。
お前の条件はなんだ?菜々実?」


数秒の沈黙を破ったのは団長だった。


「緋の目。」

「緋の目?」

「そう。今回の地下競売で出品される緋の目。
それを私に譲ってほしい。」

「それだけか?」

「とりあえずは。出来れば団長に念を封じて欲しいところやけど……。」

「封じる?」

「そ、念で念を封じる。」

「それだと除念師を探さなくちゃならない。」

「シャルの言う通り。
でも除念師に心当たりはあるから少しの間だけ。
それで誰も死ななくて済む。
悪い話じゃないと思うけど?」

「緋の目は良いだろう。
だが俺の念の話は別だ。
お前の働きを見てからにする。」

「わかった。それでいい。」


取引成功。
後は団長の答えを待つ……


なんて面倒な事はしない。
返事がなくても勝手にするだけだ。


「団長本当にそれでいいのかよ?」

「たまにはいいだろう。
面白そうだ。何か不満か?ウボォーギン?」

「不満って訳じゃないがわざわざそいつに肩入れしてもらわなくても俺達なら――。」

「どうかな?菜々実は怒らせない方がいいんじゃない?」

「ヒソカ……あんた一体どっちの味方なのさ!」

「ん~僕は団員だから蜘蛛の見方だけど、相手の力量が分からない程馬鹿じゃないからね。」

「…………。」


ヒソカの一言に蜘蛛の団員全員が口を閉じた。


泣く子も黙る幻影旅団。
だが世の中は広い。

自分達を超える人間が現れ、その圧倒的な格の違いを見せられた時、力のある者ほど力量の差には敏感だろう。


ましてや自分が世界一だと自負する者ならなおさら…………。