試験×出会い×Quintet?




目の前にはあの有名な定食屋さん。

 

結局私はキルアに手を引かれるまま進むと、数分であの有名な定食屋さんへと到着していた。

 

 

キルアに背中を押され、恐る恐る扉を開けた。

 

 

中には漫画やアニメと同じ光景が広がっていた。

 

 

 

「ステーキ定食2つ……」

 

 

 

呟くような注文の声も店の店主には届いていた様で一瞬目つきが変わった。

 

 

 

「焼き方は?」

 

 

あー知ってる。

確かに一度言ってみたかったのは事実。

でも……

いざ言うとなると心の準備と言うものは必要だと思う。

いやむしろ準備の時間くらいくれたっていいじゃないか!!!

 

 

何百メートルで着いちゃう距離に落っこちるとかほんと意地悪すぎない??

ねぇ!??

もう誰に何を怒っていいのかすらわからないこの状況でも

聞かれれば自然と答えてしまっていた。

 

 

「弱火でじっくり……」


 

 

「ほいよ。奥へどうぞ」


後悔する半分、下に降りるのは漫画版かアニメ版かどっちなんだろうと変な楽しみが沸き起こってくる自分に思わず苦笑いが漏れた。

 

 

「大丈夫だって。とりあえず一次試験は走るんだろ??
俺のスケボー貸してやるからさ」

 

 

 

「う……。がんばります……」

 

 

「さっきからテンション低すぎ。どーせなら楽しもうぜ」

 

 

 

キルアは簡単に言ってくれるが、私はいたって普通の人間であって、何かを超人的にできる訳でもない、経験も全くなし。
出来る事と言えば空手だけ。

それも10代のころは全国入賞経験があるもののここ数年は教える側に徹底してきた。

 

 

 

キルアだけじゃなくゴンやクラピカ、レオリオには会いたい。
ヒソカも遠目で拝んでみたい。

 

 

 

イル兄のギタラクル姿も見たい。
でも、でも……

 

 

 

そう思ってるうちに扉は勝手に開く。


 

 

「うわ……」

 

 

やっぱり見覚えのある光景に自然と感動に声が漏れた。

そこにはハンター試験を受けに集まり始めた人たちがいた。

 

 


「ほら行くよ」

 

 

 

キルアはざっと周りを見渡し、自然に私の手を引いて奥へと進んでいく。

 







「なんだこんなもんか」


 

 

キルアはボソリとつぶやくとつないでいた手をクイッと引っ張った。


 

 

「ほら、スケボー教えてやるから一緒に乗って」


 

端の人のあまりいない場所に誘導されると手に持っていたスケボーを床に置き

本当に教えてくれるらしい。

 

 

「う、うんありがとう」


 

 周りを見渡してもまだゴンたちの姿や、見覚えのある顔を見つけられずにいた私は、キルアの言うとおりにスケボーに足をかけ、そっと引き寄せられる手に素直にしたがってスケボーに乗る練習をしてみんなが揃うのを待つことにした。

 

 

 

 ★☆★☆★

 

 

 

何とか乗り方のコツをつかんできた頃

私たちのいる場所とは一番離れた場所にヒソカ目立つ髪がある事に気づいた

 

「!!!!!」

 

思わず叫びそうなのをなんとか我慢してじっと見つめてしまう

想像よりもまがまがしい不気味な雰囲気に、張り付けられた様に浮かぶ笑みの所為か、ヒソカの周りには異様な空間ができていた

 

もっと近くでヒソカを見たいと思わず一歩足が出た瞬間

ヒソカのそばにいた男の人の腕が宙を舞った。

 

男の人は背中を向けている所為か何があったかまではわからないけど

一歩踏み出した足をゆっくりもとに戻しヒソカに背中を向けようとした瞬間

 

「えっっ?」

 

 

視線がヒソカとぶつかった

明らかに一瞬ヒソカがニヤリと不気味に笑った

 

その瞬間背中に今までかいた事のない様な冷や汗が滝の様に流れていく

蛇に睨まれたカエルなんてものじゃない

数十メートル離れているにも関わらず

数センチ前にいるような威圧感に思考も行動も止まってしまった私を

キルアの腕が現実へと引き戻してくれた

 

 

「おい!」

 

 

私の肩に手をかけゆすって呼びかけてくれていた。

 

 

「ごめん……びっくりして……」

 

 

なんとか平静を装いながらキルアの顔をみた

 

 

「大丈夫か?」

 

 

私の流れ出る汗と、荒れた呼吸に心配そうにのぞき込んでいた。

 

 

「うん。ちょっとびっくりした」

 

 

知っていた。

確かに試験会場でヒソカは誰かの腕を落としていたのを見たはずだったのに

いや、違う

その事に動揺したんじゃなくて

あの不気味な笑みに心臓をつかまれた感覚になって」しまっていたんだと思う

 

「少しそこ座ってて」

 

キルアはそういうと優しく壁際毛と誘導してくれた。

 

 

 

それからしばらく

やっと完全に落ち着いてから私はまたスケボーの練習を始めた。

 

 

最初のヒソカをすっかり忘れていた事に後悔しながらも、大丈夫と言い聞かせた。

 

 

 

 

 

「君たち新人だな」

 

 

 

声のした方を見るとトンパが大きなお腹を揺らしながら近寄ってきた。

 

 


「俺はトンパ。わからない事があったら何でも聞いてくれ。
良かったら飲んでくれ」




そう言ってトンパはジュースの缶を2つ何食わぬ顔で差し出した。


出たよ。
超強力下剤入りジュース。


 

「おっ!俺ちょうど喉乾いてたんだよねサンキュー」


警戒する私にかまわずキルアは2つのジュースを手に取り、1つを一気に飲み干した。


それを見届けたトンパは嬉しそうに素早くその場を去っていく。


 

 

「菜々実これ飲まない方がいいぜ。」


 

そう言ってもう1つも飲み干してしまう。


 

 

「知ってる。強力下剤入り。キルアは平気だよね?ちょっとトンパに仕返ししてきていい?」


「仕返し?俺達別に何もされてないぜ?」


 

 

「私たちはされてないけどきっと他の新人は何人か既にリタイア決定でしょ。

それにあぁいうアンフェアな奴嫌いなんよな…」





そう言いながらもこのままトンパについて行けばゴン達に会えるはずだと目的の半分報復だけど後半分はゴン達に会う為。


 

 

「キルアも一緒に行こう♪きっと良い事あるから」


 

 

「なんか急に元気になったな」


 

 

「なんか言った??」





「いや、まーいっか。まだ時間有りそうだし。乗って」


 

 

私とキルアはトンパの姿を探した。

トンパを見つけた時にはちょうどゴン達にジュースを渡す瞬間だった。

 

 

「ねぇトンパさん。さっきのジュースもう1つ頂戴。
強力下剤入 り特製ジュース。」

 

 

私はトンパの後ろから近づいて明るい声で声を掛けた。

 




「なっなんの事だよ。ジュースならほら。
冗談キツイな~。
そんな特製ジュースなら君たち大変な事になってるはずだろ……ははは……」


トンパの表情が一気に焦り、早口で答えながら私の背中をぐいぐい押して

そん場から離れさそうとしてきた。

 



「それは本当か!?」
「あぶねぇ、飲んじまうとこだったぜ」
「本当だ変な匂いがする」


 

そんな私たちのやり取りを見ていたクラピカ・レオリオにゴンは受けっとていたジュースを口元から離していく。


「ねぇ新人潰しのトンパさん。冗談だって言うならコレ飲んでよ。できないよねぇ~」


そう言ってクラピカの持っていたジュースをトンパに差し出す。


もちろん飲むわけもなくトンパはみるみる青くなっていく。


「残念だったな」
「諦めろって」
「運が悪かったな」


私たちのやり取りを見ていた周りの受験者達は口々にヤジを飛ばす。


「おっさん。相手は選んだほうがいいよ」


キルアはそう言って鋭い視線を送る。

私はたじろトンパに目を向けとどめを刺した。


 

 

「飲めんってか???
自分が飲めへんのを他人に渡すとこーなるって覚えた方がいいと思うよ!!!」


 

 

私はそう言って何のためらいもなくトンパの頬をつかむと無理やりジュースを流し込んだ


 

 

 

「うわぁぁぁ~!!!」


 

 

トンパは慌ててジュースを吐き出すとその場を去っていった。

 

 

 

「うわ~。あのおっさん絶対ジュースのんじゃったぜ。
そのままトイレ直行だな」


 私の行動にさまーみろと笑うキルア

 

「新人潰しばっかりやってるから仕返しや。
あ~すっきりした」


 これでこの先トンパに試験をかき回されずに済むなと思いながらすっきりした気分で笑っていた

 

 

「菜々実やり過ぎだって。
見たかよあの顔。面白すぎ」


 

 

「ちょっと笑いすぎ。
だって嫌いなんやもん……」


 

 

「初めてあった時と全然キャラ違うし。それが本性??
俺、今のが好きかも(笑)やっぱあんた面白いよ」


 

 

笑い過ぎて目に涙をためながらキルアに言われてハッと気づく。


 

 

「やってしまった……つい地が……」


 

 

「良いじゃんそのままでさ。
もー見ちゃったしさ、今更ってことで」


 

 

そう言われ、なんとなくさっきの事で緊張のほぐれた私はキルアの顔を見て笑笑った。






「 危ないところだった。助かったよ。私はクラピカ、こっちはゴンとレオリオだ。」


 

 

「私は菜々実、こっちはキルア。間に合ってよかった。私達もルーキーなんだ。よろしくね」


 

 

そう言ってクラピカの差し出した手にそっと自分の手を添えた。


「よろしくな。お互いがんばろうぜ。」
「よろしく。
ねぇキルアは歳いくつ?俺は12」


「マジで一緒じゃん。」


 

 

そう言って漫画と同じ様に2人は楽しそうに話しだした。
そんな二人を微笑ましく思いながらポケットから出した煙草に火をつける。

 

 

 

「ここって禁煙じゃないよね?(笑)」

 

 

 

クラピカに笑いながら聞いてワザと話すきっかけを作った。


「ああ。大丈夫だと思うが」

 

 

「折角会ったんだからよろしくな」

 

 

 

レオリオの言葉に笑いながら、私も2人と雑談を始めた。

 

 

 

 

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