ハンター試験二次試験の課題は料理!!
試験官はメンチさんとブハラさんの美食家コンビだ。
メニューはもちろん、豚を使った料理!
この森に住んでる豚なら何でもいいよ~!!とのことなんだけど、ビスカの森に住んでる豚は、超凶暴な巨大ブタ、グレイトスタンプただ一種類のみ、とのことなので。
ヒソカさんとちびヒソカさんが、争うようにして狩って来てくれました。
そ、その間に、私はバッチリ焚き火の準備をしてたんだから、サボってはいないもんね!
それはそうと……諸君。
私は高いところが苦手なのである。
よって、この試験、クモワシの巣にダイビングなんかすることのないよう、全力を持って挑もうではないか!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!
たぎれ炎!!!!
いざ、クッキング!!
「トモ、お肉コゲてる★」
「カタカタカタカタ……(というか、燃えてる)」
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
慌ててバケツで水をぶっかける私。
その傍ら、ヒソカさんは完璧なミディアムレアで焼きあがったお肉を(トランプで)うすーくスライスし、イル……ギタラクルさんはお肉と色とりどりの野菜を、こちらも奇麗に串刺しにして、炭火で焼きあげたものにオリーブオイルと塩コショウで味付けなんかしている。
なんだこの、料理系男子!!!
「トモは、料理があまり得意じゃないんだね☆」
「はっきり下手だって言って下さいよ……」
「カタカタカタカタカタ……(ははは。そんなの言えるわけないじゃない。料理が下手な人に失礼だよ)」
「ど、毒舌にもほどがある!!!」
とはいえ、この結果じゃあ仕方ない。
真っ黒焦げ+水浸しになった豚の丸焼きだったものを眺め、ちびヒソカさんがやれやれ、という風に首を振っている。
涙目になる私の目の前に、何かが差し出された。
薔薇の花のように盛り付けられた、ピンク色のローストポークだった。
「はい、トモの分☆」
「え……!そ、そんな、ダメですよ!ヒソカさんが作ったものなのに」
「そ。ボクが作ったものをどうしようがボクの勝手だろ?トモには側にいて欲しいんだから、こんな試験で落第になんかさせないよ☆」
「ヒソカさん……」
「カタカタカタ……(それに、他人に手を貸しちゃいけないってルールはないからね。俺も、キミにはヒソカとは別の意味で興味があるから)」
ひょいひょいひょいっと、さりげなく彩り野菜を添えてくれるギタラクルさんである。
二人とも。
二人ともおおおおおおおおおおーーー!!!
「ありがとうございますううううーーー!!!」
「トモ。嬉しいのは十分伝わったから、鼻水拭いて審査に行ってきなよ☆ボクラは、もう少し列が空いてから行くから」
「は、はい!ありがとうございますっ!!」
ぴょん、と肩に飛び乗ってきたちびヒソカさんと一緒に、私は喜びいっぱいの胸を抱えたまま、ブハラさん目指して走った。
やっぱり。
怖いけど、二人とも良い人だ!!
☆☆☆
「クックック!トモったら、あんなに喜んじゃって……可愛いなあ」
「カタカタカタ……(ねえ、ヒソカ)」
「なんだい、ギタラクル?」
「カタカタカタ……(彼女のこと、本気なの?)」
「さあ、どうだろうねぇ☆」
「カタカタカタカタカタ(本気じゃないんだ。ふーん、よかった。じゃあ俺がもらっちゃおっと)」
「★」
シュカーン!!
と、喉元目掛けて飛んできたスペードのエースを、紙一重で避ける。
「カタカタカタカタカタ……(危ないなー、やめてよ)」
「トモはボクの★手を出したらキミの弟がひどい目に遭うからね……?」
「カタカタカタカタカタ……(出さないよ。冗談なのに。ムキになるなんてヒソカらしくないね。気持ち悪い。恋してるの?)」
「……」
「カタカタカタ……(ねーってば)」
「痛いよ。エノキでほっぺた突っつくのやめてってば★……そうだなあ。これを恋って言っていいのかはまだ分からないけど、トモって面白いよね☆」
「……」
「ギタラクル。ボクの後を追ったってことは、トモはきっと見たんだよね。ボクがあいつらをメッタ殺しにしてるところをさ……なのに、態度が変わらない。出会った時もそうだった……普通に接してくれる。それがすごく不思議で、自分でも驚くぐらい、惹かれてるんだよねぇ……☆」
「カタカタカタ……(だからさー、それって恋なんじゃないの?)」
「……分からない★」
今はまだ、と意味深に付け足す奇術師に、ギタラクルはくりっと首を傾げた。
「カタカタカタ……(素直じゃないねー)」
☆☆☆
「うんまあああああああああああああああああああああい!!!!」
「うん!肉への火の通り具合。芸術的なまでに繊細な薄切り。それに、焼き野菜による見た目の華やかさが加わって、言うことないわ!アンタ、合格!!」
「よっしゃあーーっ!!」
ブハラさん、メンチさんともに一発合格!!
流石はヒソカさんとイルミ兄さんの合作料理だ……うっ、改めて考えると、そんなレアな代物、一口くらいこっそり食べとけばよかった!!
「くそう、シクッた……」
「おい、トモ!」
「あっ!」
この声は!
ヒュウ、と吹かれた軽い口笛に振り向けば、先に合格をもらったゴンとキルア、側には金髪の美少年クラビカと、長身の顎髭ダンディー、実は十代レオリオの姿が。
「キルア~ゴンんんんん~~!!んああ~!ほっとするわ、この癒し空間!!」
ムギュっ!
「うわっ!?おい、コラ!急に抱きつくなよ!!」
「だって、だってだって……!!」
あの二人、優しいけどやっぱ怖いんだもん!!
ゴンとキルアを両手で抱きしめてぎゅううっとやっていると、後ろにいたクラピカがクスッと笑った。
うはー、美しい!!
「なんだ、ゴンとキルアの知り合いだったのか。あのヒソカに気に入られているようだったから、どんな危険な人物なのかと警戒してしまった」
「わ、わたしは別に危険なんかじゃないですよ!」
「すまない。ああ、そういえば自己紹介がまだだったな。私の名はクラピカという。よろしく」
「と、トモです。よろしく……」
ああああああああああ……!!
やっぱええわあ~!
沢城クラピカ生ボイスええわあ~~!!
でっへへへへへ、と内心でヨダレを垂らす私を、ゴンが心配そうに見つめてくる。
「大丈夫だった?トモ。あのあと、オレのあとを追っていったって、キルアに事情を聞いて心配してたんだ。怪我とかしてない?」
「うん、平気!最初のマラソンでちょっと足をくじいちゃったけど、大したことないから」
「見せてみな。俺はレオリオというものだ。これでも医者志望でな。応急処置くらいならしてやれる」
「ええ!?いいんですか?」
「いいもなにも、いつまでもくじいたまんまでいるわけにもいかないだろうが。ま、アイツにずっとお姫様だっこされていたいって言うんなら、話は別だが?」
「ぅおねがいしまあすっ!!」
ダッハッハ、と笑って、ブーツを脱いだ私の足に、シップをはって包帯を巻いていくレオリオである。
おおー、慣れた手つきだ。
流石はお医者さん志望……そういえば、本編じゃなかなかこういう治療シーンってなかったよね。
皆、怪我なんかしないからね。うん。
「ト・モ★帰りが遅いと思ったら、生足出してナニしてもらってるの?」
「!?」
うひいっ!
ふ、不穏な気配!!
振り向けば、殺気ムンムンなヒソカさんと、人形のようにギタラクルさんが立っている。
こ、この余裕しゃくしゃくな様子だと、二人とも豚料理は合格したんだろうなぁ……。
「ヒ、ヒヒヒヒヒソカさん!後から急に声かけるのやめて下さいよっ!!」
「そーだぞ!!別に俺にゃあやましい気持ちなんざ、これっっぽっちもねーんだからな!!だいたい、どーせセクハラするなら、あの美食ハンターのメンチさんのようなムチムチボインでセクシーなお姉さまをだなーー」
「……ヒソカさん、レオリオヤッちゃっていいっすよ」
「了解☆」
「んぎゃああああああああああ!!じょ、冗談だっての!治療してやった恩を仇で返すな!!全く、酷ぇよな、クラピカ!」
「今のはレオリオの発言に非がある」
「うん!俺もそう思う!」
「オレもオレもー!」
「ぬおおおお!!ゴンキルアお前らもかあー!!」
「カタカタカタ……(あはははは)」
なあんて、わちゃわちゃやっている間に、一品目の課題は終了!
メイン審査員がブハラさんだから、グレイトスタンプが捕まえられさえすれば、調理方法が丸焼きでも合格できたみたい。
「でも、二品目はそうはいかないわよ!!」
ズン!
とFカップを突き出して、美食ハンター審査員メンチさんが、不敵な笑みを浮かべた。