12 ヒソカでヒラヒラ?“薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)”!!

 

 

 

 

 

「二品目の課題はズバリ……寿司よっ!!!」

 

 

 

キターーーーーーッッ!!

 

 

 

寿司キタコレーーーーーーーーッッ!!!!

 

 

 

ガッツポーズしてるハゲ忍者が遠くにいるけど、わたしだって知ってるんだもんね!

 

 

 

日本人だからねー!!

 

 

 

「スシ……?一体どんな料理だ?ギタラクル、キミ、分かるかい?」

 

 

 

「カタカタカタカタ……(さあ?俺も食べたことないからねー)」

 

 

 

ギギギギギギギギイイイイイイッツ!!

 

 

 

と、180度首をひねるギタラクル。

 

 

 

「怖ぇよっ!!てか、なんでさっきからずっと俺の後ろにばっかり張り付いてんだよ!やめろよ!!」

 

 

 

「まあまあ、落ち着けキルア。たしかに見た目は怪しい人物だが、敵意は感じない。そんなに毛嫌いすることはないじゃないか」

 

 

 

「クラピカの言うとおりだよ。それより、キルアは食べたことないの?」

 

 

 

「スシってやつ?んー……ない、と思うぜ?だってさ、それってすっげーちっさい国の民族料理なんだろ?俺ん家、金だけはあるからさー。そんなしょぼい料理じゃなくて、もっと高級でゴージャスな料理じゃないとな!」

 

 

 

ピキッ!

 

 

 

「言い方はムカつくが、確かにそうだな。だいたい、こういう試験の課題にするなら、もっと皆が知ってるような料理にして欲しいもんだよなぁ。マイナーな国のマイナーな民族料理なんざ、誰も分かりゃしねーっつーの!」

 

 

 

「ふむ……困ったなぁ★どんな料理か分からないんじゃ、作りようがないじゃないか。なんだか面倒くさくなってきたよ。あの試験管二人、ヤッちゃおうかなぁ★」

 

 

 

「……な」

 

 

 

「え?☆トモ、今なにか言」


 

 

「寿司をヴァカにするなああああああああああああーーーーーーっっ!!!!」

 

 

 

ゴオウ!!

 

 

 

と、吹き出すオーラに吹き飛ばされるレオリオとキルア。

 

 

 

尻もちをついた二人の胸ぐらを掴みあげ、

 

 

 

「しょぼい料理?マイナー?っざけんなテメェ!!寿司をまともに握れるようになるには、10年の修業が必要だって言われてんだ!!貴様らシロートがいくら形だけ真似たって、味には天と地ほどの差があんだよボケエーーーーーッ!!」

 

 

 

「ひいいっ!!」

 

 

 

「わ、わかった!わかったから落ち着けよ!なんつーかもう怖えーよ!!」

 

 

 

「。・「@」:・_¥」:;。~~っっ!!!!!」

 

 

 

はあ……はあ……!!

 

 

 

顔をまっ赤にするわたしの耳元に、スッと身をかがめたヒソカさんが口を近づける。

 

 

 

「……トモ、纏★」

 

 

 

「はっ!しし、しまった、ついどっかで聞いたようなセリフが……」

 

 

 

「カタカタカtカタカタ……(へー、意外。トモって怒ると怖いんだねー)」

 

 

 

「だだだだだだって……!!おお寿司って確かにリーズナブルなものもあるけど、本当に美味しいものは特別な時にしか食べられないし、食べるとこ食べに行けばすっっっごい高いしでも美味しいし、寿司をバカにされるってことはすなわち、日本人類全てを敵に回すってことでーーー」

 

 

 

「トモ、スシが何か知ってるの!?」

 

 

 

「マジで!?どんな料理!!?」

 

 

 

「え?えっとねー、そこにある酢飯を手のひらサイズに握ってね、上に好きな具材を乗っけるの。基本は魚なんだけど、美味しければなんでもいいと思うよ?意外な組み合わせにハマっちゃうこともあるからさ!」

 

 

 

「えっ!?そんだけかよ!?」

 

 

 

「なんちゅーシンプルな料理だよ……」

 

 

 

「いや、待て。確かにシンプルだが、それ故、味には一切の誤魔化しが効かない。更に、いかにオリジナリティーを出すかにも工夫のしがいがある。その点においては、試験課題に相応しい料理だと言えよう」

 

 

 

「そのとーり!!」

 

 

 

わあっ!!?

 

 

 

振り向けばメンチさん。

 

 

 

しっぶい顔で仁王立ちしたまま、わたしの額にグリグリと人差し指を突きつける。

 

 

 

 

「まあったく!あんな大声で答えをぶちまける奴がどこにいんのよ!!この審査では、ハンターとして必要な想像力を見る目的だってあったのに!!」

 

 

 

「ひゃああっ!!ごめ、ごめんなさいいいいっ!!あんまりにも寿司をバカにされたんで、つい地元民の血が騒いでっ!!」

 

 

 

「はあ……ま、いーわ。アンタのその、食に対する愛情の深さに免じて許したげる!」

 

 

 

「というか、その子が怒鳴らなかったらメンチがキレてたよねぇ」

 

 

 

「ブハラは黙ってて!とにかく、こうなったら他の受験生たちにも言っておくわ。寿司がどんな料理かは、さっきこの子が言ったとおりよ。ただし、酢飯の握り方一つをとっても、口に入れた時の舌触り、温度、ネタの味全てが異なるの。簡単だとか思ってる奴は泣きを見るわよ!心して挑みなさい!!」

 

 

 

うおおおおおおお!!

 

 

 

ーーとばかりに、食材を求め、我先に狩りに出るハンター志望者達。

 

 

 

あっという間に戻ってきては、さっきのヒントをもとに、猛然と酢飯を握り始めた。

 

 

 

えーと、もしかして、わたし……。

 

 

 

「余計なこと、言っちゃいました?」

 

 

 

「カタカタカタ(うん。大声でね)」

 

 

 

「ごごごごごごごめんなさいごめんなさいっっ!!!」

 

 

 

心なしか皆の視線が冷たいような気がするううう!!

 

 

 

でも、そんなわたしの頭を、ヒソカさんは楽しそうに笑いながら、優しくなでてくれた!


 

 

「ま、いいじゃないか☆ライバルがいくら増えたって、合格者に制限人数があるわけじゃないしネ」

 

 

 

「ヒソカさん……!!」

 

 

 

「あ、言い忘れてたけどー、アタシのお腹がいっぱいになったところで試験は終了だからねー!!」

 

 

 

「……★」

 

 

 

「どおーすんだよ!!??見ろ、出来上がった寿司を持った奴があんなに列を作ってる。今から食材を捕りに行ってたんじゃあ、間に合わねーぜ!?」

 

 

 

「落ち着け!レオリオ、何かまだ手があるはずだ!!」

 

 

 

「そうだよ!諦めちゃダメだ!!」

 

 

 

「カタカカタカタカタ……(ねぇ。あのメンチって女の胃袋をえぐりとって、こっそりポリバケツとすり替えるっていうのはどうだろう)」

 

 

 

「こっそり出来るわけねーだろ!!なんかその発想が、うちの兄貴とそっくりで怖えよアンタ!!」

 

 

 

「どどどどどうしよう……!!」

 

 

 

どうしたらいいんだ……!!

 

 

 

これで皆が合格出来なかったら、間違いなくわたしのせいじゃないか!!

 

 

 

大好きなハンターの世界……大好きなハンターのキャラクター達……思えばわたし、今までみんなに助けられてばっかりで……なのに、こんなに足をひっぱって……。

 

 

……。

 

 

 

……ダメだ。

 

 

 

ダメ!!!

 

 

 

絶対に、不合格になんかさせない!!!!

 

 

 

「ちびヒソカさん!!」

 

 

 

『☆!』

 

 

 

待ってました、とばかりに、ぴょーんっと、ポケットから飛び出すちびヒソカさんである。

 


 

まな板の上にシュタッと降り立ち、凝視するゴンやキルアや、その他面々の顔をじいっと見上げていたかと思えば、

 

 

 

「☆☆☆☆☆☆!!!!!!」

 

 

 

「あ。あまりの嬉しさのあまり卒倒した」

 

 

 

「そりゃあ、ボクだもの。こうもたくさんの青い果実を前にしたら……ねぇ?」

 

 

 

大福餅のよーなほっぺたを真っ赤にして、あっけにとられるゴンの手に、

 

 

 

きゅっ!

 

 

 

と抱きつくちびヒソカさん。

 

 

 

うわあ……さすが、手が早い。

 

 

 

当然のことながら、初見の皆さんはびっくり仰天。

 

 

 

穴が空くほどちびヒソカさんを見つめている。

 

 

 

「ヒ……ヒソカだ!小さいけど、こいつ、ヒソカだよね!!?」

 

 

 

「に、人形……?にしてはすげぇリアルだ……」

 

 

 

「うむ……、な……なんというか、その」

 

 

 

「不気味だな」

 

 

 

「失礼だなあ。殺しちゃうよ?」

 

 

 

「カタカタカタカタ……(まあまあ。で、トモ。こいつを呼んで、どうするつもり?)」

 

 

 

「あ、そうでした!ちびヒソカさん、私たちすっごく困ってるんです!力を貸して下さいませんか!?」

 

 

 

ゴンの手にすりすり~すりすり~とほおずりしていたちびヒソカさんは、きゅっとわたしをふり向いて、

 

 

 

『OK!』

 

 

 

と、指でマークを作ってくれた。

 

 

 

「やったあ!じゃあ、あの寿司を持って並んでる受験生たちを、出来るだけ血の出ない方法でなんとか邪魔して時間を稼いで下さい!!」

 

 

 

『……』

 

 

 

「出来るかんなことー!!」

 

 

 

「出来るもん!!ちびヒソカさんなら出来るもん!!だってヒソカさんなんだからなんでも出来るんだもんーーー!!」

 

 

 

「そんなに期待されちゃうと……責任重大だなぁ☆で、どうするの、ボク?」

 

 

 

『……☆』

 

 

 

むぅ、と考えこむようにあごに手を当てていたちびヒソカさんだけど、なんだかゴソゴソと股間……ズボンの中を探っていたと思ったら、ヒラヒラした赤いものを取り出した。

 

 

 

「ハンカチ?」

 

 

 

こ~っくり、うなづくちびヒソカさん。

 

 

 

まっ赤なハンカチをさっそうとひるがえし、受験生たちの列に向かって走っていく。

 

 

 

彼らが持っている寿司の皿目掛けてシュワっとジャンプする姿は、なんだかこう、スーパーマンのごとく。

 

 

 

「ハンカチなんか持って、一体あいつ、どーするつもりだ……?」

 

 

 

「ええっとーー」

 

 

 

あ。

 

 

 

あーっ!!

 

 

 

そうか、分かった!!

 

 

 

アレはきっとヒソカさん(大)の念能力の一つーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーシュッ!


 

「な、なんだっ!?」

 

 

 

突如、受験生が叫んだ。

 

 

 

「お、俺の作った寿司が消えちまったぞーーっ!!?」

 

 

 

ーーシュッシュっ!!

 

 

 

「おおっ!?俺のもだ!!」

 

 

 

「こっちのもねぇぞ!!?」

 

 

 

ーーシュシュシュシュッ!!

 

 

 

「あれ?ここにあったはずの食材が……」

 

 

 

ーーシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!!

 

 

 

「酢飯もねえー!!」

 

 

 

「まな板ごとねえーー!!」

 

 

 

「どどどどうなってるんだーーー!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

                   ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おお。

 

 

 

おおおーーー!!

 

 

 

すごいすごい!

 

 

 

小さな小さなヒソカさんは、赤いハンカチをヒラリヒラリとなびかせながら、お寿司からお寿司へと飛び回る!

 

 

 

そして、ふわっとハンカチがかぶさるたびに、そこにあったお寿司が忽然と消えてしまうではないか!!

 

 

 

BGMはもちろん情熱のフラメンコ!!

 

 

 

華麗に闘う闘牛士のごとく!!

 

 

 

「すごいすごい!!さっすがちびヒソカさんっ!!小さくてもヒソカさんですねっ!!」

 

 

 

「“薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)”……ハンカチの表面をオーラで覆い、「皿」を再現☆すると、まるで寿司が消えたように見えるというわけか……クックック!驚いたなあ。トモの能力は小さな分身を作り出すだけじゃなく、オリジナルの持つ念能力まで再現しちゃうみたいだね……☆これってスゴいことだよ……、スゴく魅力的な能力だ……ああ……なんだかボク、興奮してきちゃったよ……★」

 

 

 

ぴと……っと、どさくさに紛れて、あらぬ場所を密着させてくるヒソカさんである。

 

 

 

「ひぎゃああああああっ!!だだだだだ、ダメですっ!!こんなところで欲情しないで下さい!!まだやらなきゃいけないことがあるんですから、ストップ、ストーップ!!」

 

 

 

「ちぇっ★」

 

 

 

ちぇっ★じゃないよ、全く……さて、これからが大仕事なんだ。

 

 

 

「いでよ、ペンタブ!!」

 

 

 

「わあっ!」

 

 

 

「すげ!何もないところからペンが出た!!」

 

 

 

あれ?見えるんだ??

 

 

 

念能力者の素質があるからかな……まあいいか、今はそんなどころじゃない!

 

 

 

「えーっと、お寿司、お寿司っと!イクラにー、マグロにー、エビにー、イクラにー、ウニにー、とり貝ー、タマゴー、イカにー、イクラにー、かっぱ巻きにーイクラにー、イクラにー、イクラにーイクラにーイクラとーイクラ!!!」

 

 

 

カキカキカキ……。

 

 

 

「できた!!」

 

 

 

ピカっと光ったイラストから現れたものに、ゴンが大きな目をキラキラ輝かせた。

 

 

 

「わあ~っ!!」

 

 

 

「うひょおおおーー!スゲー!!!」

 

 

 

「な、なんという美しい料理だ……!」


 

 

「これぞ寿司!!握り寿司ですよ!!漆塗りの寿司桶の中に、色んな種類のお寿司をキッチリ並べるともう、宝石箱のごとし!!」

 

 

 

「カタカタ……(色んなっていうか、ほとんどイクラだけど、美味しそう。食べていい?)」

 

 

 

「ダメに決まってんだろ!?もー!アンタってほんとに嫌んなるほどうちの兄貴にそっくりだぜ!!」

 

 

 

「食べ物も具現化出来るんだ。ますます興奮するねぇ……☆」

 

 

 

「ストップですっ!!はい、皆ならんで!お皿持って!一貫ずつ取り分けますから、順番にメンチさんのところに持って行って下さい!」

 

 

 

「ええ!?でもこれ、トモが作ったものなのに、いいの?」

 

 

 

じいっと、上目遣いに見つめてくるゴン。

 

 

 

ああもう、可愛いっ!




ヒソカさんじゃないけど興奮するうううううう~~っ!!

 

 

 

「いいの!他の人の分を作っちゃいけないっていうルールはないもん。それに、わたしってば皆に助けられて、足手まといになってばっかりだから……だから、ちょっとでも力になりたいの。皆のこと好きだから、合格してもらいたいし!!」

 

 

 

一人でも、欠けて欲しくないから。

 

 

 

「トモ……!」

 

 

 

「ありがとう。心から礼を言う」

 

 

 

「バーカ。足手まといになんかなってないっつーの!」

 

 

 

「そうだぜ。こっちが好きでやってるんだから、気にすんな!」

 

 

 

「カタカタカタカタ……(ま、俺の場合はビジネスだしね)」

 

 

 

「興味あるって言ってたくせに。素直じゃないなぁ、ギタラクルは……☆」




クックックっと喉で笑ったヒソカさんは、わたしの頭をひと撫でして、




「--じゃ、行こうか☆」

 

 

 

はっとするくらいに、優しい仕草で背中を押してくれた。


 


「はいっ!」