うお!!?
うおおおおおおおおおおおおおおおうっっ!!!
ネテロ会長おおおおおおおおおおおおおおおおう!!!
てゆーか、てゆーかっ、こ、こここの声は、な、なが……ななななんあななんあななんあなななんあなななな!!!!!
永井一郎さーー
「トモ、下がって★」
ぐいっ、と、首根っこをひっつかまれる。
「ひうっ!!?ヒ……ヒソカ……さん……!?」
返事のかわりに、キロリ、と目だけが私を向く。
金色の瞳が、獣みたいにギラギラしてる。
でも、そこには霧の中で見たような享楽的な色は一切なかった。
ネテロ会長なんて強敵を前にしたヒソカさんが、まさかこんな目をするだなんて。
楽しさも喜びもなにもない。
潜んでいるのは純粋な敵意だ。
トモ、ともう一度、名前を呼ばれた。
「……トモ。オーラを静めて。少しの間だけ、ボクの後ろで大人しくしていてくれるかい……?」
「は、ははっはいっ!!」
「いい子だ★」
にこっと、目の前のピエロが微笑んだ瞬間。
「!!!??」
いきなりだった。
それまで普通に立っていたヒソカさんの身体が、何十倍もの大きさに膨れ上がったように見えたのだ!
そんな錯覚を引き起こさせるほど、強力で、強大で、高密度で噴き出すオーラ。
怖い……なな、なんか、頭から冷水に突き落とされたみたい。
ゴンたち四人はぎゃっと悲鳴を上げて固まっちゃうし、ギタラクルさんはそんなキルアをさりげな~く守ってるし、わ、わたしも、へんな汗と身体の震えが止まらないよ……!!
これが、これがヒソカさんの戦闘オーラ……。
あの、本編の四次試験で、ゴンが震え上がってたオーラを実際に体験できるなんて。
……。
ぬあああああしいあああわあせえええええええええええええーーっ!!!
「ト・モ?★」
「うひょあ!?は、はい!つい興奮してしまいました、すみませんっ!!」
「カタカタカタ……(興奮って。あ、そうか。初めて会ったときから、トモって誰かに似てるなーとおもってたんだけど、ヒソカに似てるよね)」
「「「「「似てない!!!」」」」」
ゴン、キルア、レオリオ、クラピカ。
そして、当のご本人のヒソカさん、援護ありがとう!
「似てないですよ!!わたし、ヒソカさんみたいに強くないし、背も低いし、つり目でもオールバックでもクックックって笑ったりもしてないのに!!一体全体、どこが似てるって言うんですか!?」
「カタカタ……(変態なトコ?)」
……ああ、うん。
「そこは否定出来ませんけど」
「してよ★はあ……全く。トモといると闘る気削がれちゃうなぁ」
背中越しに、困った顔で振り向くヒソカさん。
そんな!!
「す、すみ、すみませんヒソカさん!!わたしに気にせず、どうぞ!お好きなだけヤッちゃってください!!」
邪魔だと思われて、捨てられちゃかなわないもんね!
ヒソカさんはこの世界で一番好きな人なんだから……もとい、一番好きなキャラクターなんだから、こんなことで嫌われたくはない。
そう思って背中を押したら、ぷはっと吹き出されて爆笑されてしまった。
お腹抱えて笑ってるヒソカさん……か、可愛い!!
「あっははははは!!まさか、ヤッちゃってと言われるとは思わなかったなぁ……!☆☆☆トモって意外と酷いこと言うよね」
「--は!?ほ、ほんとだ、わ、わたしってばつい……でも、ネテロ会長さんなら、ヒソカさんが本気になって戦っても大丈夫ですよね?」
「これこれ、ワシは見ての通りの年寄りじゃぞ?」
嘘ばっかり!!
久しぶりに新刊が発売されて、ネテロ会長が蟻と戦ってるとこ、ちょっぴり見たんだから。
爺さん、めっっさくそ強いくせに!!
うさんくさーい目で見つめていると、ネテロ会長はかっかっかっと快活に笑って顎髭をなでた。
「まぁ……受験生の諸君らとどうこうする気はないの。44番。お前さんが案じておるような真似も、するつもりはない。ハンター試験中に念を習得してはいかんというルールは、作った覚えがないからのー。ま、ワシを含めて他の試験官連中も、お嬢ちゃんのことはじっくり見守るつもりでおるから、安心せい」
「案じているような真似……?」
なんですか、とヒソカさんを見上げてみたのだけれど、内緒、とあっさりはぐらかされてしまった。
「……そう★じゃあ、用がないならとっとと消えてくれないかなぁ。ボクたち、ボケ老人を相手にしてる暇、ないんだよねぇ」
ひい!
「ヒソカさん、ダメですよ!!ネテロ会長はハンター試験の最高責任者なんですよ!?お願いですから、自分から失格になるようなこと言わないでくださいよぅ……!!」
「だって★」
「だってじゃありません!!ヒソカさんが途中退場みたいなことになったら、わたし、わたし……!!」
「泣かないでよ……わかった。トモがそう言うなら大人しくしてる☆」
「カタカタカタ……(俺としては、いなくなってくれた方がハッピーなんだけど)」
「ギタラクルさんは黙っててくださいっっ!!!」
「かっかっかっ!!本当に、元気のいいお嬢ちゃんじゃのー!ふむ。水見式をしとったのか。ほほう、これまた面白い結果がでたの」
「あっ!」
気がつけば、机の上に置いてあったコップが、ネテロ会長の手の中に。
いつの間に取ったんだ……。
「物質を、立体的な“絵”として固定化する。お嬢ちゃんのオーラの特性を簡単に言うと、こんなところかな?」
「立体的な“絵”として固定化する……」
「さよう。お嬢ちゃんは、きっと絵を描くことが好きなんじゃろうな。愛情にも似た、強い念がこめられたいいオーラじゃ。こういうオーラを念として扱う場合、愛情をこめればこめただけ、念能力も強化される傾向にあるの。何か、思い当たることはないかな?」
チラッと、ポケットの中に視線を落とすと、
『……☆』
小さなヒソカさんに、小さな人差し指でしい~っとされた。
了解。黙っておきます。
「食えない爺さんだなぁ。話はそれだけ?だったら……★」
「わーかったわかった!全く、気が短い男は女娘にモテんぞ」
「余計なお世話★それに、断っておくけどボクは女性に不自由したことはないからね」
……ですよねー。
嘘つけ変態野郎、なんて、後ろでレオリオが毒づいてるけど。
ヒソカさん、ほんっっっとカッコイイんだから。
見た目だけじゃなくて、男の人としての立ち居振る舞いも完璧。
出会ってからまだ一日も経っていないけど、マラソンのときもそうだし、二次試験の料理のときもそう。
飛行船の廊下を歩いているときだって、さり気なく通路側に立ってくれていたし、ドアももちろん開けてくれるし。
さっきの立食パーティー(?)では、とどかないところにあるデザートのケーキを、“伸縮自在の愛”を使って、こっそりとってくれたりもした……とにもかくにも。
一緒に過ごしている間は、常にわたしに気を配ってくれているんだ。
しかも、そのさりげなさが半端ない!!
こんな人、女の人が放っておくはずないじゃないのおおおおおっ!!
「トモ★」
「あ、すみませーー」
んちゅっ!
「}+{`_?}{`|`~=+L*}*!!!???」
「ほんとにトモは物覚えが悪いね。今度は注意じゃなくてキスするって言ったろ?」
「だ!!ででっだでででっっででででも、でもこんなところでっ!!!」
「そうだね★部屋がいいよね。仮眠室でも借りようか。じゃあ、皆。秘密の集会はお開きだよ☆ボクタチはこれで失礼する」
「ちょおおおおおおおおおお待ーーーーーーーーーーーっっ!!!???」
ゴンキルアレオリオクラピカああああああああああああああああああ!!!
合掌すんなあああああああああああああああああーーーーーっ!!!!
ギタライルミ兄さんも、ばいばーいなんて手ぇ振ってないでたあすけてぇーーー!!!
声にならない悲鳴を上げながら、ジタバタと無駄な抵抗をする私を抱きかかえ、ヒソカさんはそれはそれは楽しそうに笑っていた。