20 半端無く破天荒な展開!!

 

 

 

……い。

 

 

 

言っちまったあーーーーーーーーっっ!!??

 

 

 

「あ……アンタも、殺し屋……?」

 

 

 

「カタカタ……(うん)」

 

 

 

いいんですか!?

 

 

 

ついさっき、ヒソカさんがぽろっと(わざと)言っちゃったときにはあんなに睨んでたくせに!!

 

 

 

自分でバラすのはええんかーーー!!

 

 

 

あ、でも、殺し屋だってだけで、ゾルディックだって言ったわけじゃないから、正体がバレちゃったわけじゃないんだけど……うーん。

 

 

 

そんなわたしを含め、ここにいる四人が四人、色んな思惑を抱きつつギタラクルさんを見つめていたわけなんだけど……重い沈黙を破ったのは、他でもないギタラクルさんだった。

 

 

 

驚きと、困惑を隠せない顔のキルアに向かって、静かに語りかける。

 

 

 

「カタカタカタカタ……(毒は大丈夫でも、苦いのがダメだなんて情けないね)」

 

 

 

「う、うるせーよ!!嫌なものは嫌なんだから、仕方ないだろ!?べ、べつに、我慢しようと思ったらできたけど、やらなかっただけ!!」

 

 

 

「カタカタカタカタ……(ふーん。それで、本当に毒が入ってたらどうするつもりだったの。それを知らずに、こいつらが飲んで死んじゃったかもしれないよ。ああ、でも、別に構わないか。殺し屋に仲間なんて必要ないからね)」

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

ぎゃあ!!

 

 

 

そう来たか……!!

 

 

 

そう来るのかーーー!!?

 

 

 

イルミ兄さん、本当なら最終試験で行うはずのキルア洗脳を、まままま、まさかの三次試験でヤッちゃうつもりなのかーーー!!?

 

 

 

油断も隙もねえーーーーっっ!!!

 

 

 

これにはちょっと、ヒソカさんも焦ったみたいで(だって、目をつけてた青い果実が握りつぶされようとしてるわけですから)、後ろ手にそっと開かれた手のひらに、スペードマークのトランプを忍ばせた。

 

 

 

見上げた眼光は……うわあ、鋭い。

 

 

 

キルアとギタラクルさんの静かな睨み合いを、わたしたちは物も言えずに見守っていた訳なんだけど、意外にも、それを破ったのはゴンだった。

 

 

 

「違うよ!キルアは、俺の言葉を信じてくれただけだ!おかしな匂いはしない。ただの野菜ジュースだって。でしょ、キルア!」

 

 

 

「ゴン……俺……」

 

 

 

「だからさ、だから……キルアは何にも悪くない。そうだよね?」

 

 

 

ゴンの言葉に、レオリオもクラピカもハッと胸を突かれたような顔をして、笑って頷いた。

 

 

 

「あ、でもさ、好き嫌いはダメだよ?嫌いなものでもちゃんと食べないと大きくなれないって、ミトさんが言ってた!」

 

 

 

「……まーたミトさんかよ。でも、分かった!わがまま言ってゴメンな?」

 

 

 

「いいってことよ!」

 

 

 

「ああ。それに、たとえ毒が効かないと分かっていたとしても、人体に危険性のあるやもしれないものを、キルア一人に押し付けようとした私たちにも非がある。すまなかったな」

 

 

 

「謝んなって!なんか照れるじゃん」

 

 

 

頬をほんのり染めあげて、ぷいっとそっぽを向くキルア。

 

 

 

うわああああああ~~!!

 

 

 

かわええーーーーーーっっ!!!!!

 

 

 

「ト・モ☆そんなにキスして欲しいの……?」

 

 

 

「うひょわっ!?え、ええ遠慮しときますぅ、纏、纏っ!!」

 

 

 

「カタカタカタカタカタ……(ちぇ。なんだか奇麗にまとまっちゃった。そんなつもりじゃなかったのになー)」

 

 

 

「ギタラクル。キミも、調子にのってるといい加減勘づかれるよ?★」

 

 

 

「そうですよ!キルアってもんのすごく勘がいいんですから!二次試験のときだって、うちの兄貴にそっくりなこと言うって言われてたじゃないですか。今みたいなこと続けてると、そのうち絶対――」

 

 

 

「カタカタカタ……(はいはい、分かった。気をつけるよ)」

 

 

 

ヒソヒソ、小声で小言を言うわたしとヒソカさんに、ギタラクルさんは心底鬱陶しそうに手を振った。

 

 

 

ポーン、と機械音。

 

 

 

『試練をクリアーしました。受験生は多数決を実行して下さい』

 

 

 

「あっ!そうか。てへへ、俺すっかり忘れてたよー」

 

 

 

「はあ?そのために苦い思いまでして、訳の分かんないもの飲んだんだろ?」

 

 

 

「カタカタ……(九割は、俺だけど)」

 

 

 

「分かってるよ!しつけーなっ!!」

 

 

 

「よし。ではまず、全員で進むか、幾つかのグループに分かれて進むかを決めよう。念の為に断っておくが、試練が全て今のようなものとは限らない」

 

 

 

「というと?」

 

 

 

「これはハンター試験。受験者の力量を測るため、戦闘を課題にされる場合も充分有り得るということだ。そのことを踏まえて、よく考えて欲しい」

 

 

 

「んじゃ、トモはヒソカと一緒にいたほうがいいよな?チビのヒソカがついてるとは言え、戦闘っていうとからっきしだろ?」

 

 

 

「うん、無理!」

 

 

 

「だね☆トモはボクが守る。そのことを絶対条件にするなら、ボクは全員で一本の道を行くよりも、複数に分かれて進み、少しでもゴールへたどり着く確率を増やしたほうがいいと思うんだけど……どうかな?」

 

 

 

「俺もそれに賛成。だいたい、この足場の広さじゃあ、せいぜい5メートル四方だろ?全員で戦闘ってなったら、絶対狭いって」

 

 

 

「カタカタカタカタ……(逆に、一人になっても戦い抜けそうな人材は、俺、キルア、ゴン……それに、金髪の君)」

 

 

 

「クラピカだ」

 

 

 

「おいコラ!!なんでその中に俺が入ってねーんだよ!?」

 

 

 

「カタカタカタ……(君の武器は特殊技能と医療知識。サポーターの方が向いているよ。レロリロ)」

 

 

 

「レオリオだーー!!」

 

 

 

ま、まあ、なにはともあれ。

 

 

 

わたしたちは、右と左に分れて進んでいくことに決めた。

 

 

 

そこからどう分かれていくかは、状況に応じて判断する。

 

 

 

でも、試験官さんに出された“どのチームにも最低一人腕輪を嵌めた人間が含まれていること、”という条件は守らなきゃいけない。

 

 

 

ということで――

 

 

 

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ!!!

 

 

 

全員同時に腕輪のボタンを押すと、ガコンガコン、と一本橋が二本、左右の足場に向かってそれぞれ伸びた。

 

 

 

「行くぞ、右チーム!!」

 

 

 

「いえーい!!」

 

 

 

「イエーイ☆頑張ろうね!

 

 

 

マルを押したのはわたしとヒソカさん、そしてゴンの三名!

 

 

 

そして、左を選んだのは――

 

 

 

「左チーム!!うおおお俺に続け―!!」

 

 

 

「断る」

 

 

 

「俺もー」

 

 

 

「カタカタ……(右に同じ)」

 

 

 

ははは。

 

 

 

左の足場に進むことになったのは、レオリオとクラピカ。

 

 

 

ギタラクルさんに……キルア。

 

 

 

この四人で、ホントに大丈夫なんだろうか……?

 

 

 

特に、最後の二人の組み合わせには不安が膨らむ一方だ。

 

 

 

「キルアー、ホントに左でよかったの?ゴンと一緒に右に進んだほうがよかったんじゃないの?」

 

 

 

「だって、それじゃあ競争にならないじゃん。な、ゴン!」

 

 

 

「うん、どっちが早くゴールの扉へたどり着けるか、勝負するんだもんね!」

 

 

 

「マラソンじゃ同着だったからなー、ここで決着つけてやる!」

 

 

 

「うん!負けないもんね!!」

 

 

 

「楽しそうだなあ☆ねえ、ボクも混ぜておくれよ」

 

 

 

「「ダメ!!」」

 

 

 

がっくり、項垂れるヒソカさん。

 

 

 

ともあれ、わたしたちは二手に分かれ、次の足場へとコマを進めたのである。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

                   ***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――さて、諸君。

 

 

 

最初の足場で二手に分かれた後、約二時間が経過したわけなんですが。

 

 

 

わけなんですが……しかし。

 

 

 

 

“試練その2、メンチ特製フルコースを完食せよ!!”

 

 

 

“試練その3、メンチ特製真冬の珍味、大ガマグチアンコウ鍋を完食せよ!!”

 

 

 

“試練その4、メンチ特製豪華絢爛満貫会席を完食せよ!!”

 

 

 

「なんでさっきから食べ物系の試練ばっかなんですかーーー!!バトルあみだくじなのに、全然バトルしてないじゃないですかーーー!??」

 

 

 

「ボクに言われても……★」

 

 

 

「うっぷ……た、食べたよ、最後の餃子……もう俺、お腹いっぱい……!!」

 

 

 

あーあー、ゴンったら風船みたいなお腹してひっくり返っちゃった。

 

 

 

でも、それは向こう側の足場にいる左チームも同じみたい。

 

 

 

足場と足場の距離は10メートルくらい離れているんだけど、ズズズ、と足元からせり上がった巨大ウェディングケーキを前に、レオリオが盛大な悲鳴を上げている。

 

 

 

--甘いものか。

 

 

 

ちょっと羨ましいかも!

 

 

 

ポーン!

 

 

 

こちらの満貫会席については、なんとか完食したことで機械音が鳴った。

 

 

 

『試練をクリアーしました。受験生は多数決を実行して下さい』

 

 

 

「……」

 

 

 

「どうしたんだい、トモ?スピーカーを睨みつけたりして」

 

 

 

「いや、なんかさっきから聞いたことのある声だと思ってたんですけど……」

 

 

 

もしや。

 

 

 

「もしかして--メンチさん?」

 

 

 

『……あら、よっくわかったわねー、アンタ』

 

 

 

メンチさん!!?

 

 

 

「やっぱりですかー!!さっきから出てくる料理にメンチ特製、メンチ特製ってしつっこいくらいついてくるからもしかしてと思ったらーー!!」

 

 

 

「キミ、二次試験の試験官のはずだろ……★それがこんなところまでしゃしゃり出てくるだなんて……しかも、食べる試練ばかりでつまらない。ヤっちゃうよ?★」

 

 

 

今回ばかりは止めませんヒソカさん!!

 

 

 

『事情があんのよ……っとと、あっぶない。とにかく!!この美食ハンターメンチ様が、臭い豚小屋で自慢の腕を振るってあげてるんだから、まだまだがっつり、ありがたくいただきなさいよ、受験生!!』

 

 

 

「はあ!?なにが自慢の料理だよ!!その分じゃ、最初に飲んだ謎のドリンク。あれもお前が作ったんだろ!?くそマズかったぞー!!」

 

 

 

「カタカタカタ……(まあ、九割は俺が飲んだけど)」

 

 

 

「だから、しつこいっつーの!!」

 

 

 

向こうの足場で生クリームまみれになりながら、キルアがギタラクルさんにフォークを投げつけて怒鳴っている。

 

 

 

それを、一本残らず片手で受け止めるギタラクルさん。

 

 

 

ちょっと、兄弟喧嘩してる場合じゃないですよ!?

 

 

 

『アレは漢方だから、不味くて当たり前なの!!内臓の働きを強化する薬草がいっぱい入ってる特製ドリンクだったのにさ。せっかくの親切心をーーうわっ!?ちょっと、いきなり引っ張らないでよ!リッポー!!

 

 

 

『……大変失礼した。彼女の言葉は気にせずに、試験を続けるといい』

 

 

 

プツン、と切れる通信。

 

 

 

同時に、ピリリリリリリ、とヒソカさんから発信音が。

 

 

 

あ、そう言えばヒソカさん、通信機持ってたんだった。

 

 

 

「はい、ヒソカだよ☆ギタラクル、今の聞いてただろ?敵はこれ以上ボクらを分散させる気はないようだね」

 

 

 

『カタカタカタ……(そのようだね。信じられないくらい馬鹿らしいけど、極めて効果的な手だ。こんなに大盛りの料理を続けて出されたら、少人数に分かれようって気すら起こらなくなる。でも、かたまって進めば、その分、ゴールに辿り着く確率も減る。それに、万一、ハズレの道を選んでしまった場合、もう一度最初から食べ直さなきゃならなくなる』

 

 

 

『胃袋の中に、これだけ滅茶苦茶詰め込んでるんだ。消化されるまで、最低でも三時間以上……いや、その前に満腹中枢がやられちまう。こんなことを続けたんじゃ、じきに物を食べようって気力すら、起こらなくなるぜ!』

 

 

 

チキショー!!と、悔しがるレオリオの声が、遠くに響く。

 

 

 

な、なんて陰湿な……。

 

 

 

「初めの足場で分れた後、右チームのボクたちは、これまで三つの試練をクリアーしてきた。道はねずみ算式に増えているわけだから、この時点で確率は全体の八分の一☆次の足場へ全員で進めば、一気に倍の十六分の一になる。ここらで、さらにチームを分散しときたいとこだけど……

 

 

 

『カタカタカタ……(まだまだガッツリって、言ってたからね。彼女。この手の試練が、次も用意されてそうだ)』

 

 

 

「それに……もうひとつ、気になることも言ってた★」

 

 

 

『カタカタ……(内蔵強化の漢方ドリンク?)』

 

 

 

「違う★ギタラクル、分かっててわざと外すのやめなよ」

 

 

 

『カタカタカタ……(分かったよ。――豚小屋、だろ?ここさ、どうやら刑務所らしいんだよね)』

 

 

 

「け……!?」

 

 

 

刑務所!!

 

 

 

そうだ、そう言えばそうだった……!!

 

 

 

食べてばっかりいたから、原作のことなんてすっかり忘れてたけど。

 

 

 

「知ってたんだ……★この塔に入る前にボクが感じていたのは、囚人たちの放つオーラだったんだねぇ。なのに、戦闘系の課題が全くないのはどうしたことだろう?」

 

 

 

『カタカタカタ……(そうだなー。きっと、俺達が腹いっぱいになって、動けなくなったところを狙うつもりなんじゃないのかな?俺が試験官だったら、そうするね)』

 

 

 

「ムカつくなぁ★ブチ殺してやりたいよ、ギタラクル」

 

 

 

『カタカタカタカタ……(俺に八つ当たりされても。とにかく、次に進む前になにか策を講じないとヤバイね。俺も流石に腹が膨れてきた)』

 

 

 

「だね☆ちょっと考えてみるよ」

 

 

 

ピッと、通信を切るヒソカさん。

 

 

 

「そういうわけだ、トモ、ゴン。この大食い合戦に終止符を打ついい手はないかな?☆」

 

 

 

「そ、そう言われても……完食するのが試練なら、食べるしかないんだよね……?」

 

 

 

「二手に分かれたいのは山々ですけど、またあんな量の料理が出たら、完食するのにどれだけ時間がかかるかわかったもんじゃないですよ。ああ、でもそれが狙いなのか……くうー!!嫌な試練!!」

 

 

 

頼みの綱のチビヒソカさんも、ゴンのとなりでおまんじゅうみたいな顔におまんじゅうみたいなお腹して、大の字で転がってるし。

 

 

 

い、いっぱい食べてくれたもんなあ、そんな小さい身体なのに――

 

 

 

「ヒソカ。やっぱり、次の足場へは分かれて進もう。俺は一人で行く。トモのことを頼んだよ」

 

 

 

「ゴン、だが……さすがの君でももうこれ以上食べるのはキツイだろ?★」

 

 

 

大丈夫だよ!ちょっと身体を動かぜば、じきにお腹も減ってくると思うし。それに、これ以上、道を減らしちゃうわけにはいかないからさ

 

 

 

汗だらけの顔に、ニカッと笑顔を浮かべるゴン!!

 

 

 

「ゴン……☆」

 

 

 

ああああああああああああああああああああああああ!!!!

 

 

 

ゴン!!!

 

 

 

ゴン!!!!!

 

 

 

なんっって可愛いんだ君はーーーー!!!

 

 

 

こんなのヒソカさんじゃなくったって興奮しちゃうじゃないかーーーーー!!!!

 

 

 

その笑顔!!

 

 

 

心意気!!

 

 

 

描きとめておきたい、このペンタブで!!!

 

 

 

ペンタブ?

 

 

 

「あーーーっ!!??そ、そうか!!その手があった!!」

 

 

 

「トモ?」

 

 

 

キュピーン!と頭上に光るは、筆アイコン!!

 

 

 

具現化したペンタブを滑らせればーー描ける描ける!!

 

 

 

ヌメール湿原でヒソカさんを描いたときと同じように、空中にオーラの線!!

 

 

 

よっしゃああああああああああああああ!!!!

 

 

 

うなれ、ペンタブ!!

 

 

 

そういえば、食べるのはキルアだって得意だったはず……描ける!!

 

 

 

だって、さっきのキルアの顔、すんごい切なくて可愛かったんだもんーー!!

 

 

 

下書き、ペン入れ、着色、影付け……みるみるうちに作画作業を進めていく私を、ヒソカさんとゴンは目を丸くして見つめている。

 

 

 

昨日の夜。

 

 

 

寝台に沈んで、眠る直前、ヒソカさんはわたしに言った。

 

 

 

その力を、能力として伸ばしていくつもりがあるなら、名前をつけなきゃいけないって。

 

 

 

随分考えて、悩んだけど。

 

 

 

やっぱもう、これしかない気がした!!

 

 

 

初めてチビヒソカさんを生み出したとき、頭に浮かんだ名前。

 

 

 

それは--

 

 

 

「“伸縮自在の恋人達(フォーミーラバーズ)”!!!」

 

 

 

完成したゴンとキルアのイラストが光る!!

 

 

 

その光の中から、ピョーンと飛び出す二つの影。

 

 

 

それはまさしく!!

 

 

『!!』

 

 

 

ツンツン黒髪、くりっくりの目が可愛いちびゴンと、

 

 

 

『!!!』

 

 

 

ふわふわ銀髪、ちょっと意地悪そうな青いニャンコ目のちびキルア!!

 

 

 

二人ともかっわいーーーーーーーーーーっ!!!!!

 

 

 

シュタッと床に降り立った二人を、ヒソカさんがヘッドスライディングでかっさらった。

 

 

 

「ゴンーーーーー!!!キルアああああああっ!!!ああああっ!!ふ、二人とも、そんなに可愛い姿になって……!!ボクは……ボクはもうーーー!!!」

 

 

 

「ヒ、ヒソカさん!!気に入って下さったのはよくわかりましたから!!そんなに抱きしめたらチビゴンとチビキルアが潰れちゃいますよーー!!」

 

 

 

「うわあー!!すごい!ちっちゃいけどこれ、俺なの!?」

 

 

 

『☆☆☆☆☆!!』

 

 

 

うわあ、さっきまでお腹いっぱいでへばっていたはずのチビヒソカさんが元気いっぱいだー。

 

 

 

ピリリリリリリリ!!と、通信機が鳴る。

 

 

 

「ギタラクル!?うるさいよもう、今興奮しすぎて、キミと話をしているどころじゃないんだよ!!……なに?100億出すからそのキルアを後で個人的に譲って欲しい?ダメダメ!!この子達はトモの大切な念能力で、トモはボクのものなんだから、この二人もトモも、全部ボクの!!」

 

 

 

出た……ワールドイズマイン、世界はボクのもの宣言!!

 

 

 

「ヒソカさん!纏!!ダメですってば、ちびゴンとちびキルアは、この大食い大合戦のピンチヒッターなんですから!どさくさに紛れて懐にしまおうとしないで下さい!

 

 

 

「ちぇっ★分かったよ」

 

 

 

「そっか!小さい俺達に、食べるのを手伝って貰うんだね!すごいや、考え付きもしなかった!!」

 

 

 

「そういうこと!じゃあ、ちびヒソカさん、二人のうち片方を連れて、左のチームを助けに行ってもらえますか?“伸縮自在の愛”なら、向こうの足場まで届きますよね?」

 

 

 

『☆

 

 

 

キュッ、とOKマーク。

 

 

 

次の瞬間、ちびヒソカさんはヒソカさん(大)の腕の中から小さなゴンを奪い取り、ピンク色の念のガムをぴゅんと伸ばして、ターザンのように左の足場へ渡ってしまった。

 

 

 

「ああああああああーーーーーっ!!!ゴン!!!ボクの小さなゴンがーーーっっ!!!」

 

 

 

「泣かないで下さいよぅ……」


 

 

「あー、悪いんだ―ヒソカ。それ、浮気って言うんだよ。ヒソカにはトモがいるんでしょ?好きな人が傷つくから、浮気だけは絶対にしちゃいけないってミトさん言ってたよ?」

 

 

 

「うう……わかったよ……トモ、おいで★」

 

 

 

「むぎゅ!」

 

 

 

だ、だから、“伸縮自在の愛”で抱き寄せるのはやめていただきたい!!

 

 

 

「よーし。それじゃあ、ちびキルアは俺と一緒に行こうね!」

 

 

 

『!!!』

 

 

 

ゴンが手を差し伸べると、小さなキルアはまかせとけ、というように親指を立てて、ぴょんっとゴンの肩に飛び乗った。

 

 

 

「もしもし?なんでヒソカとゴンがこっちに来るんだ、だって?★そんな、ボクだってちびゴンと一緒にいたかったんだから、贅沢な文句言うなよギタラクル。ゴールについたら小さなキルアにもちゃんと会えるし、頭だって好きなだけ撫でたらいいだろ?うん、うん、だから、売るのはなしだってば!★もう切るよ?――よし。それじゃあ、行くとするか。ボクとトモは左を選択。ゴンとちびキルアは右の足場だ。ゴン、キミの野生の勘、期待してるよ☆」

 

 

 

「まっかせといて!!ヒソカもトモも、気をつけてね!」

 

 

 

「うん、絶対にゴールにたどり着こうね!!」

 

 

 

それじゃあ、しばしのお別れ!!

 

 

 

わたしたちは、お互いに握手を交わして、次の足場へ進んだ。