「皆様大変長らくお待たせいたしました!
審判を務めさせていただきます、小兎です。
只今より一回戦、第一試合の選手入場です!
暗黒武術会開会いたします!!!!!」
元気な審判の小兎の開会宣言と共に両チームの入場となった。
観客からは耳を塞ぎたくなるような罵声やヤジが飛んでいた。
どれも相手チームである六遊会チームへの激とも取れるものばかりだった。
「おーっと!浦飯チームに癒術師最後の生き残りと言われる鳴鈴実選手の姿があります!!
更に!覚醒して数か月と言われていますが今だ守護者との契約印は左胸に記されておりません!!!」
ゆっくりとリングサイドへ歩いて行くと、審判の声に会場がざわつき一斉に視線を集めた。
「気にするな!俺達が付いてるからよ!」
一瞬足を止めてしまった私に、寝てるとは思えない幽助の寝言が勇気をくれ、みんなは静かに頷いてくれる。
そっと飛影に背を押されて私は前へと足を踏み出した。
「では、両チーム前へ!
戦い方と勝敗は両チームの大将同士の話し合いによって決めて頂きます。折り合いがつかない場合はそれぞれ5名が1対1で戦い勝った人数の多いチームの勝ちとします。」
幽助が眠ったままの状態を考え桑原君が代行での話し合いとなった。
結局この試合は1対1の勝負となり、審判の説明の通りとなった。
相手チームの是流が威嚇の殺気を放っても幽助は起きる気配なく、第一試合が始まった。
「では、先鋒前へ!!」
「トップは俺しかいねーだろ!!」
そう言って桑原君がリングへと上がった。
相手は鈴駒。
「1対1で戦う事以外ルールなし!場外とダウンは10カウントでKO負けです。
では始め!」
前半有利に進められていたと思った試合は鈴駒が放った10個のヨーヨーの出現で桑原君は打撃を受け初めて、とうとうヨーヨーによって宙へと持ち上げられてしまった。
結局大健闘の末、大会ルールの10カウントに背を押される形で鈴駒の勝利となってしまった。
試合終了のアナウンスが終わると大会本部からのアナウンスが流れる。
「大会本部からの呼び出しを行います。浦飯チーム補欠である鳴鈴実様、至急大会本部までお越しください。尚、試合中の為、他の選手の同伴は認められません。」
アナウンスが終わると飛影に手を掴まれた。
「行く必要はない。罠だ。」
「でも…。」
大会本部の命令は絶対、拒否する事は死を意味する。
私は動揺を隠せなかった。
いくら正装を着て、妖気で威嚇しても逃げ出せるほど大会本部は甘くない。
きっと戸愚ロもいるはず…。
「心配はいらん。わしが一緒について行く。」
振り向くとリングに一番近い席にコエンマが来ていた。
「コエンマ!!ジョルジュ!!」
「フン!鳴鈴実に何かあればコエンマ、お前を殺してやる。」
「わしを脅すでない。これでも一様、浦飯チームのオーナーなんじゃ、心配するな。」
「大丈夫。絶対帰ってくる。」
私は飛影に笑顔で言うと掴んでいた手をそっと離してくれる。
「何かあれば呼べ、その時ここにいる妖怪共全部倒して迎えに行ってやる。」
私は頷くと、コエンマの元へと向かった。
「護衛よろしくね。」
私は観客席へと飛び移ると、手を差し伸べてくれていたコエンマの手を取り会場を後にした。
会場を出るまで飛影の視線を背中に感じていた。