24 契約と刺青 ①

 

 

 

 

部屋に入ると飛影はソファーに座って私を待っていた。
こちらを振り向かずに背を向けたままの飛影。

「なぜ泣いていた?」

「私、飛影と契約やめたい…。」

一体なんの事を話していて、私が泣いているのかわからないまま、ホテルへ帰って来ていた飛影にむかって私は、自分の決めた結論をまずぶつけた。

「何があったか話せ。
左京といた時何かあったわけじゃないだろう。
コエンマと何を話していた?」

「飛影と契約しない。」

「蔵馬とでもするといいだすのか?」

「誰ともしない。」

苛立ちがピークに達した飛影は立ち上がると加減なしで私を壁へと押しつけると噛み付くようなキスをする。

「嫌!!離してっ!」

私は必死で抵抗しようと飛影の胸を押してもびくともしなかった。

いつもの優しいキスでも、眩暈がしそうな深いキスでもなくて、怒りをぶつけられる様なキスに怖くなって涙があふれてきた。

「さっさとホントの事を言え。
無理やり抱かれたいのか?」

「いや…。あんな…キスは…嫌。」

押さえつけられていた肩は解放され、私は恐怖で震えた自分の身体を抱きしめながらその場に座り込んでしまった。
「私が死んだら一緒に死んでくれる?
霊界と契約してどこにいるか把握されてもいい?
もし、飛影が死んだら私は他の奴に無理やり契約させられるかもしれない。
……ねぇ飛影?それでも私の守護者でいたいと思ってくれる?無理だよね?
………だから私は誰とも契約しない……。」


流れる涙を拭いもせずに私は顔をあげ、飛影を見た瞬間抱きしめられた。
何が起こったかわからず、驚きのあまり涙の止まった目で瞬きを繰り返していた。

「フン、俺も見くびられたもんだな。
なにがあったか知らんが一度しか言わん、良く聞け。
望通り一緒に死んでやる。
霊界と契約?どうせお前は霊界からの依頼を受けるんだ。傍にいれば当たり前の事だ。
最後に俺はお前をおいて死なない。もしもの時は俺が死ぬ前に、俺がお前を殺してやる。他の奴と契約する必要などない。お前が俺を守護者に望むなら何があっても俺はお前の守護者でいてやる。いいな?」

「うっ…うう…。」

私は飛影の言葉を聞いて飛影の背中に腕を回してしがみ付いて泣いた。
嬉しさと、そんな運命を背負わせてしまう後ろめたさ。

「ごめんね。ごめんね。」

私はただ飛影に謝る事しかできなかった。

「ゆっくりでいい、何があったか説明しろ。」

飛影は抱きしめながら背中を摩る様に撫でてくれる。
少しずつ落ち着きを取り戻した私はコエンマに話した事を飛影にも説明した。

 

 

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