30 霊界召集 ③

 

 

 

 

「さっ、そろそろ本題に入りましょうか?閻魔様。」

「おお!そうだったな。契約書…契約書…。」

そう言いながら閻魔様は誓約書を机の上から探していた。
霊界と癒術師との契約書。

双方にとって悪い条件は特にない。

霊界からはS級妖怪として管理下に置く事(癒術師・守護者共)
更に霊界からの治療依頼に応える事。

その代りに霊界での仙華球保有者・後継者の継続した保護。

その他霊界・人間界・魔界の自由な行き来の保障。

魔界の実態調査協力。

もしもの時は守護者を霊界に協力させる事など。

今の私にとっては当たり前の事しかない。

「あった、あった。」

そう言って閻魔様はテーブルの上に誓約書を置くと自分のサインをした。

私も続いてサインをする。

「この誓約書見ると多少腹立つんですよね。」

「ん???どこがだ??」

「守護者は癒術師と主従関係にある訳じゃないのになんだかそれっぽい言い回しでしょ?」

「気にくわんのか?」

「気にくわない。」


そう言うと閻魔様は地響きがしそうなほどの大笑いをした。

「改正しよう。
昔、千愛稀にも同じ事を言われて忘れておったわ。」

「改正よろしく。」

そう言って私は笑いながらテーブルに置いてあったコーヒーを飲んだ。

「ちょっと待っておけ。」

そう言って閻魔様は誓約書を持ってどこかへと行ってしまった。

テーブルに置かれたままになっていた写真に目を落とす。

懐かしいその写真に微笑みを浮かべながらも母の守護者が写っていない事に淋しさが込み上げてきた。
写真は仙華球の受け渡しの直前に撮った物だった。

その数日前。

守護者であった鈴(リョウ)と言う妖怪は母を守って死んだ。

もちろん母の守護者であり、私の父にあたる。


どちらかと言えば飛影に少し似ているかもしれない。

けして饒舌ではないものの、強く優しい人だった。


多くの仲間に囲まれていた。
ある意味で母の守護者は鈴だけでなく、その仲間達もだったのかもしれない。

いつも幸せそうに笑っていた2人を私は羨ましく思っていた。

いつか自分もそんな相手に出会いたいと思ったきっかけだった。

鈴はけして穏やかな人とは言えなかった。
やはり妖怪らしく、好戦的な面もあった。

戦いを望むと言うよりは強さを求める。そう言った方がいいかもしれない。

片時も母から離れない訳でわなかった。

だがその時は必ず鈴の仲間が母の傍にいた。

私の良く遊んでもらっていた。

私と飛影はこの先どうなるのか、考えない訳ではないが、今のように仲間に囲まれて、笑って過ごしたいと思っていた。

幽助も飛影も好戦的である。今の蔵馬は守る者もあるからか、昔ほどではない。
桑原くんも妖怪に比べるとさほど感じない。

みんな一緒にいれたら良いのに。

飛影は3人が好きだから。
引き離したくはない。


「さっ!悪いが書き直しだ!」

そう言って新しい誓約書をもった閻魔様は部屋に帰ってくるとドカッと椅子に座りサインをし直した。


さっと書類に目を通すと言い回しが変わっていた。

そのかわり守護者の拇印が必要となっていた。

「これ飛影に押してもらったらいいの?」

「ああ、頼めるか?」


「ん~…たぶん大丈夫とは思う。」

「納得して契約したんだろ?」

「そーだけど、基本面倒臭がりだから(笑)」

「まぁ押したらコエンマにでも渡してくれ。」

「わかった。じゃー準決勝も気になるから私人間界に戻るね。」

「ああ、気を付けてな。
たまには顔見せに来い。」


「は~い!!」

私は閻魔様に笑顔でてを振ると人間界へと向かった。

 

 

 

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