21 2つの仙華球  ①

 

 

 

 

「契約の刺青のことは?」

「癒術師は生まれる時おでこに契約の刺青が数日浮かび上がる。その花が個人の象徴となる。私の場合は蓮の花。」

「蓮ですか。その綺麗な白い肌に蓮の花か、良く似合いそうだ。」

「そりゃどーも。」

「200年眠りにつくのはなぜですか?」

「仙華球は癒術師の妖力変換機能みたいな物なの。
代々受け継がれるおかげで、受け取ってすぐの仙華球は前任者の妖気に染まってる。それを自分の妖気に染め、同調させなければ役割を果たしてくれない。更に同調出来なければ仙華球は体内で消滅する。自分の妖気に染めるのと、身体が仙華球の持つ能力に慣れるまで200年程かかる。」

「それは大変な作業だ。」

「そ、過去に仙華球が消滅した例はあったらしい。今この世に存在する仙華球はこの一つだけ。だから私は生きて、次の自分の子供を産んで託さなくてはいけない。」

私はそう言うと自分の左胸に手をあて、左京を見つめた。

「あなた達に良い様に使われる訳にはいかないの。」

「心配なさらずに。私は昨日の奴らの様な汚い考えはもっていません。
今回の大会は純粋に楽しみたいと思っているだけです。」

「その割にはずいぶん汚い事してるんじゃない?」

私はそう言うと自分の後ろを指指した。

私の後ろでは2回戦を終えた浦飯チームがこのまま連戦で3回戦を迎える事になり、さらに飛影と覆面を結界師が閉じ込める形になっていた。
「次のオーナーの仕業ですね。
どうされますか?あなたが希望されるなら取り消して、明日に組み直しますが?」

私は悩んだが、飛影の妖力は戻っている。あんな結界師ごときに閉じ込められていられるわけがない。

「いえ、結構です。あなたに借りは作りたくない。
浦飯チームは勝ちます。」


私は左京に余裕の笑みを向けた。


「そろそろあなたの事を教えてもらいたいな。」

「私の事?」

「そうです。癒術師 鳴鈴実ではなく、鳴鈴実と言う一人の女性の事を。」

一体左京は私の何が知りたいのか?
癒術師としての私以外の見方をする相手が今までいただろうか?

「何がそんなに知りたいの?」

「簡単なことですよ?
あなたがどんな物が好きで、どんな事を喜ぶのか。そんな当たり前な事が知りたいんです。
癒術師としてのあなたは皆さん興味がおありだ。
でも一女性としてもあなたはとても魅力的だ。」

「そりゃどーも。ありがたく受け取っておきます。」

「貴方のそーゆーところが良いんですよ。」

「そーゆー所ってどーゆー所よ?」

「絶世の美女といわれている美しさに下手に手を出せば棘に刺される。
そんな薔薇みたいな所ですよ。深紅の薔薇より妖艶な紫の薔薇のイメージですね。」

「確かに私は見た目と違って大雑把で、女らしい性格じゃないですけど。
見た目で判断されるのはご勘弁。」

「あはははは。私はさっぱりした女性は好きですよ。」

「裏社会の人間じゃなかったらいい感じなんだけどな(笑)」

「花言葉は『誇り・王座』やっぱりあなたにピッタリだ。
是非今度贈らせて下さい。」

「あはははは…折角だからいただいておきます。
さて、私はそろそろ会場に戻ります。
一試合は付き合ったからいいでしょ?」

「もうお戻りに?でもあまり引き留めるのも心が痛みますね。
第二試合もそろそろ終わりの様ですのでお気をつけて。
また御誘いしてもよろしいですか?」

「いいけど、そのたびに殴られるのも嫌だから、普通に呼んで。
気が向いたら来るから。」

私は左京に背中を向けて手を振り部屋を出て、そのままコエンマの部屋へと向かった。

 

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