数日後
私は人間界へと来ていた。
「何この長い階段は・・・。」
玄海の家に前の石階段で私は息を切らしていた。
何とか登り切り、門をくぐった瞬間、首にヒヤリとした物が押しあてられる。
それと同時に私に向けて殺気が放たれた。
身動き出来ずに固まってしまった。
「そのピアス、どこで手に入れた?」
背後から聞こえるその声に私は違和感を覚えながら、突然の出来事に声が出ない。
「おい!飛影!何をやってるんじゃ!!刀をおろさんか!!」
コエンマが私に剣を押しあてている男の人の事を飛影と呼んだ。
「うるさい!俺はこの女に聞いている。
さっさと答えろ!!」
更に首に刀を押しあてられる。
私はなんとか声を絞り出した。
「昔ある人にもらった。」
「誰にもらった?」
「邪眼の男の人に虫除け位にはなるからって。」
その言葉を言った瞬間首に当てられていた剣はなくなり、身体を強引に引っ張り後ろを向かされた。
さっきまで剣を当てていた男の人の顔を見る。
「あ・・・。」
あまりの衝撃に声が出なかった。
「髪の色はどうした!?
それに妖気も違う!」
飛影は目を丸くしていた。
「覚醒すると茶色に…ってなんでここにいるの!?」
私はびっくりし過ぎて思わず後づさってしまった。
「邪眼で探しても見つからなかったぞ。」
「え!?だって霊界の結界の中で、保護してもらいながら覚醒まで眠りについていたから…。ってあの時名前教えてもらおうと思ったもに起きたらいなかったし!!」
飛影は大きなため息をつくと、小さく舌打ちをしてた。
「飛影。」
小さな声で名前を言うと、そのまま近くの木の枝に登ってしまった。
「ちょっと!!まだ話は!」
勢い良く放った言葉とは裏腹に私は驚きのあまり腰を抜かしてしまった。
「おい!いったいどー言う事だ!?」
コエンマは私に駆け寄り手を差し伸べてくれ、私は俯いたままコエンマの手を握ると立ち上がった。
「守護者・・・。」
風に吹き消されそうな声で私は答えた。
何かを悟ったコエンマは、何も言わずに私を家に案内してくれた。
襖を開けると知らない人たちが座っていた。
その中に一人、知ってる妖気を感じて私はその人物へと飛びついた。
「蔵馬!!」
「うわ!!嗚鈴実久し振り。
無事覚醒できたんだな。」
蔵馬は突然飛びついた私を受け止め、体制を立て直すと、昔の様に頭を撫でてくれた。
「約束通り守護者が見つかるまでは俺達が嗚鈴実を守ってやる。」
「おいおい蔵馬いいとこ持っていくなよ。」
「それもそうだね。紹介するよ、こっちが霊界探偵の浦飯幽助。
こっちが桑原和真、それからこの家の所有者で、霊光波動拳の使い手玄海師範。
あと、あそこの木の上にいるのが邪眼師の飛影。
これから嗚鈴実が守護者を見つけるまでの間手を貸してくれるメンバーだ。」
「よろしくな!嗚鈴実!!」
「嗚鈴実ちゃんなんでも言ってくれよ!この男桑原嗚鈴実ちゃんのためならなんだってするからよ!」
「ここにいる間は私がいるから安心しな。」
「ふん。ピアスは一旦返せ。また妖力を吹きこんでやる。」
いつの間にか部屋へとやってきた飛影と、みんな口々に挨拶してくれた。
「それより嗚鈴実は飛影と知り合いだったのか?」
「あ・・・、う、うん。昔、蔵馬みたいに一回怪我治したことがあって。」
「そっか、なら知ってる奴が2人もいたら安心だな。
それより蔵馬、さっきから喋り方が・・・。」
コエンマは苦笑いを浮かべていた。
「なんだか嗚鈴実と話すと昔の口調が自然と・・・。」
照れながら蔵馬は頬を掻いていた。
「今の話し方でいいよ。昔より優しくて好き。」
私は笑顔で蔵馬に頼んだ。
「それにしても魔界・霊界・人間界で一番の高嶺の花と言われるだけあって本当に綺麗だよな。」
「ありがとう。なんか恥ずかしいかも。」
「嗚鈴実は見た目と違って凛としてる、とは程遠いですからね。」
「ちょっと蔵馬!それはひどいんじゃない!?」
「そうですか?すぐ感情的になるし、すぐ手はでるし(笑)」
手を顎に添えて思い出すように話す蔵馬の肩を叩きながら私は必死で止めた。
「確かに。でも飯はうまいな。」
「ちょっとコエンマまでひどい!!」
「「「「「あはははは」」」」」
みんなで顔をあわせて笑ってしまった。
自分の知ってる大切な人達が、自分の知らない間につながっていた。
200年の年月が在ったからだけではありえない驚きと、うれしさがこみ上げていた。