もぞもぞ、シーツから顔を出してみる。
「ねぇ、イルミー」
「ん?」
「変なこと聞いていい?」
「ヤだ」
「……じゃあ普通のこと!」
ゴロリ、と寝返りを打つように背中を向けたイルミは、ちょっとだけ嫌そうな顔をして振り向いた。
「結局聞くんじゃないか。まあいいや、で、なにを聞きたいの?」
「ん……あのね、イルミは私のこと、好きだって言ってくれたよね?」
「うん。好きだよ。それがどうかした?」
「………いつから?」
「?」
「えっとさ、ハンター試験中はそんなことひとっっっっことも、言ってくれなかったじゃない?だから、一体いつから私のこと好きだったのか気になったんだけど……」
「そうだっけ?」
「そうだよ!え!?なに、気がついてなかったの!?」
「うん」
こ~っくり。
ベッドに寝転んだまま深々とうなづくイルミを、初めてぶん殴ってやりたいと思った。
「俺はハンター試験のときからポーが好きだったよ?具体的にいつって言われると困るけど、念の修業につきあわされてるうちに、なんだか自分でもわからないうちに楽しくなってきてさ。
試験が終わっても、ポーと一緒にいたいって思った。でも、俺はやってる仕事が仕事だし、家族もあんなだから、無理強いするわけにはいかないし、でも好きだし、迷ったよ。かなりね」
「酷いよ!!そんなの抱えてたんなら話してくれたらよかったのに!お陰で私、すんごく混乱したんだから!!!好きって言って何度もキスされたし何度もキスしたのになんにも言ってくれなくて、でも優しいし、心配してくれるし、でも試験が終るなり急につきはなすみたいに冷たくなるし、それでいきなり嫁にこいなんて言うしさ……!!!」
「泣かないでよ、ごめん」
「うう~!イルミのバカ~!!」
「……」
しくしく、再びシーツに潜り込んだ私の頭を、ぽんぽんと撫でていてくれたイルミだが、ふと思い付いたようにシーツをめくり上げた。
「ねぇ、俺も知りたくなったんだけど。あのとき、三次試験に向かう飛行船の中で、ポーが俺のことを好きって言ったのはなんで?念を教えるって言ったから?」
「……それだけじゃないけど、それもあるよ?自分の試験もあるのに優しいなって、思ってさ……私、イルミが言うように全然優秀じゃないし、物覚え悪いし、そのくせいっぱい無茶して……それでもイルミ、見放さずにいてくれたから」
「……ポーは、言ったら調子にのるから言わないだけで、出来は全然悪くないよ。ただ、良いのか悪いのかっていうのが微妙でさ。予測がつかないっていうのかな」
「例えば?」
「例えば、念の泡。最初見たときは防御専門の能力だと思った。包んで守る。それ以外使い道なんてないって。でも、それをポーは色んな風に工夫していっただろ?試しの門を開いたのもそう。バクテリアにして毒から身を守ったり、逆に毒を運ばせたり、他にも、泡を何重にもくるんで、破裂させ、ソナーにしたりさ。あんなの、そうは思いつかないよ。自分の念能力の特徴を知りつくし、よく観察して延びしろを見つけ出す。念の育成、という才能が、ポーは突出してる。誇っていいよ。誰にでもできることじゃない」
「……!!」
「だから、泣かないでってば。なんで泣くの?誉めてるのに」
「だ、だって……!イルミが誉めてくれることって滅多にないんだもん……!!」
「困ったなー。そんなに泣くんならもう誉めないよ?」
「な、泣かない!!泣かないから誉めて!もっと誉めて!!」
「はいはい。優秀、優秀」
ぽんぽん、と、大きな手のひらが私の頭をなでてくれる。なげやりな口調とは裏腹に、あんまりその手が優しいものだから、また鼻のあたりがつんとしたけれど、なんとか我慢して微笑んだ。
「……そういう顔するんだもんなあ。まあいいか。もう一回抱くよ?」
「え!?」
ガバッ!!
「うえええええええ~~~~っっ!!!?」