「……イル兄、ってさ」
「……うん」
「クックックッ!ズルいよね、ほんと」
まあ、そこがイイんだけどね
本気か冗談が、実に際どく呟いて、奇術師はくるりと振り向く。
「さあて若い二人がいなくなったところで、誰か……寂しいボクのお相手をしてくれるひとは」
「あーあ!俺、なんだかほっとして眠くなっちゃった」
「俺もー。ゴン、今夜はうちに泊まって行こうぜ?ベッド貸してやるからさ」
「うん!」
「誰か……」
「ダッハッハッ!ポーには驚かされっぱなしじゃわい。一体いつからいたんじゃろうなあ、おいシルバ。お前、気づいとったか?」
「いや。俺もまだまだ鍛練が足りねぇようだ。明日から修業のし直しだな」
「それ、是非ともボクがお手伝いさせていただきたいなあ……」
プルルル……プルルル……ガチャ。
「カルトちゃん!!ミル!!二人ともどこにいるの!!?……なんですって、飛行船!?ポーを連れていくつもりでいたけど逃げられた。でも、無事に合格したってイルから連絡があったから、今から戻る……ですってえええええ――!!?カルトちゃん!ミル!!あなたたちまでイルの味方につくなんて!!罰として明日の拷問は三倍に増やしますからね!!!」
「さーて、イルとポーの邪魔になってはいかん。わしらは寝るとしようかの」
「ああ。早く孫の顔を見たいもんだ。なあ、キキョウ」
「まあ!貴方ったら気が早くってよ!」
「ボクの……」
わいわいがやがや。
殺気ムンムンのヒソカをアウトオブ眼中に追いやって、暗殺一家は朗らかに去っていく。
ポツンと後に残された背中がさすがに可愛そうになって、ゴンが振り向いた。
「ヒソカも、一緒に寝ない?」
「ゴン!?」
「ゴン」
「バカ!お前、ほっとけよこんな変態!」
「だって……ヒソカも、ポーとイルミのことを心配して、駆けつけてくれたんだよ?」
「それはそうかもしれないけどさあ、ヒソカの場合は裏にある理由が多すぎるんだよ!」
「それにさ、もし、ポーが不合格になったときには、シルバさんやゼノさんとも闘わなきゃいけなかったかもしれないでしょ?俺、すごく心強かったんだ。ヒソカがいてくれて!」
「そ……それは――」
むぎゅ。
「うわっ!?ヒソカ!!?」
「放せよ変態っ!!」
「ん―――いい匂いお言葉に甘えて、今夜はキミタチと一緒に寝ようっとキルア、キミの部屋はたしかこっちだったよね」
「なんで知ってるんだよおおお!?ええい、放せっ、放しやがれ――っ!」
「キルア、落ち着いてよ。ヒソカはもう闘う気なんかないって。ね、ヒソカ!」
「クックックッ!」
「ほーら!」
「闘う気はなくても襲う気は満々だっつーの!!!」
はあなあせ――――――!!!
暗殺一家ゾルディック家の一角に、キルアの悲痛な叫びが響いて消えた。