廃墟街から車に乗って、賑やかなヨークシンシティへと戻ってきた私。
蜘蛛達は中心街から少し離れた所に車を停め、そこから動くつもりのようである。
人混みに紛れやすいように、それぞれが普段着に身を包んでいる。
私はというと、せっかく返してもらったので、セーラー作業着のままで来てしまった。
まあ、陸の上だし着る物なんてなんでもいいんだけどね。
団長はおなじみの、前髪をラフに降ろしたバージョン。今日はグレーのシャツに黒のスラックス姿。
シャルナークさんは白シャツにキャメルのジャケット。細身のパンツスタイルだ。
そして……黒のパーカーにジーンズ姿のフェイタンさん!!
クロムハーツかなぁ、なんか格好いいアクセサリー類まで、さりげなくつけていたり。
ああああもう!! この心の中に噴き出す鼻血をどこにぶつけたらいい!!
「何ジロジロ見てるね……殺されたいか?」
「ふわああ!! す、すみません、つい!」
ど、動悸が治まらないよう……目に毒とはこのことだ。
だめだめ、こんなことで無駄にオーラを噴出している場合じゃない。
オークションの下見だとか言ってるけど、このメンバーだ。いつマフィア相手に戦闘を起こしても不思議じゃないし、陸上での戦闘は苦手なんだから、オーラはとことん節約しないと。
節約か……団長が特質系だから、あと現地で補給出来るのはシャルナークさんの操作系と、フェイタンさんの変化系のオーラか。
うーん……。
「フルーツやお酒と一緒にお肉も食べたいなあ……あ、ステ――じゃなかった、ウボォーさん! ノブナガさんも一緒に行きましょうよー!」
ちょうど、近くに車を停めた二人に声をかける。
強化系の兄ちゃん達はちょっと顔を見合わせて、
「あのなあ、団長に少人数って言われただろうがよ!」
「ポー、今さらっと、俺達を肉呼ばわりしなかったか……?」
「き、気のせいですって……」
ノブナガさんたら怖いなあもう。
びくっとしつつもちょっとがっかりしていたら、隣にいたシャルナークさんがふーん、と首を傾げた。
「ポーってさ。もしかしてだけど、俺達の念の系統、全員把握してたりするの?」
「え……?」
にっこりと尋ねてくる金髪美青年。
その笑顔の裏側に潜む真意が、正直おそろしい。
そういや、イルミが言っていた。悟ったことを軽々しく口に出すのはアウト。下手に勘が鋭いと知られると、口封じに殺されやすくなるから気をつけて、と。
「えーと……」
「ん?」
でも確か、こうも言っていた。
自分の実力を、相手に認めさせたい場合においてのみ――有効だ。
「そりゃあ……生物学者ですからね。一昨日、直接オーラを吸収させて貰ったメンバーはもちろん他の団員も。ほぼ丸一日一緒に過ごしてたら、系統だけじゃなく生体オーラが体内を流れる特徴から、どんな念能力を使う人なのか、大体の予測をつけることくらいはできますよ。海の生き物に比べたら、人間はとても分かりやすいから」
半分は真実。半分は、まあ、原作を読んでるから知ってるっていうハッタリも入ってるけど。
カンペなしでも、今の私なら観察のみで分かっちゃう自信はあるよ!
へえ、と目を丸くするシャルナークさん。その横で、フェイタンさんがふん、と鼻で嗤った。
「はっ! 下手な嘘ね。能力を使てもいないのに、そんなもの分かるわけないよ」
「じゃあ言っちゃいますが、フェイタンさんは変化系です。変化系のオーラはお酒っぽいんですけど、強い人ほど度数が高くて、熟成された高級酒っぽい感じがします。フェイタンさんのは茅台酒(マオタイ酒)……それも、50度超えの飛天茅台(フェイテンマオタイ)っぽいんですよね! 氷みたいに冷たいのに、いざ体内で吸収しようとするととんでもなく熱くなるから、温度変化が得意なオーラなのかなって思います。あと、発動させるにはそれなりの刺激も必要なのかなと……もがっ!」
「もういいね!! それ以上話したらブ殺すよ!!」
ど、どこから出したんですか、その仕込み傘……!
美味しくないんだから、口の中に先っぽ突っ込まないで下さいよう!
「うわあ、何気にいいとこついてるじゃない。やるねぇ。ちなみに、俺のは?」
「シャルナークさんのは……」
胡散臭い……そして、あっさり爽やか系と見せかけてとても濃厚でねちっこい。
ヨークシン編では、登場回数も見せ場もそんなに多くなかったのに、どんなコマでも独特の存在感を否応なしに放つ、旅団の影の王者。
「……ドリアン」
「あっ、酷い!」
ぶはっと噴き出したのは、意外にもこの様子を静観していたクロロ団長だった。
どうやら、彼なりのツボにハマったらしい。
細かく肩を震わせつつも、なんとか平然を装い、
「……二人とも、それくらいにしておけ。ポーの観察能力の高さは、昨日一日で充分に把握した。戦闘能力についても、二人は身をもって体験済みだろう。そこで、今日はお宝を物色すると同時に、盗賊に絶対不可欠な別の要素を見ようと思う」
「別の要素……ですか?」
「ああ。そのために、俺達は今からとあるマフィアのアジトへ潜入する。今回行われる闇のオークション……アングラオークションを取り仕切る組織だ。そこのメインコンピュータから、オークションの出品リストのデータを盗み出す」
「データ……? なら、シャルにハキングさせればいいね」
「ごめんね。それが、団長に言われてやってみたんだけど、セキュリティーが鬼のように厳しくてさ。外からは無理っぽい。直接行って、ぶっこ抜くしかないかなって」
「もともと、アングラオークションに参加する権限のある者にしか渡されない極秘データだからな。まあ、問題ない。欲しければ盗む、それだけだ」
ふっ……と、ニヒルに笑うクロロ団長。
は、話が一気に盗賊っぽい流れに……! アングラオークションの出品リストといえば、クラピカがネオン令嬢のお屋敷で見せられた、あれだよね。
どこかの王女様のミイラとか、一角獣の角とか……クルタ族の緋の眼も、その中にあったはず。
潜入か。たしかに、盗賊には必要なスキルだ。
できるだけ、みんなの足手まといにならないようにしよう……そんなことを考えていたら、ふいに、クロロ団長にぽん、と肩を叩かれた。
「潜入の指揮は全てポーがとれ。今回だけは特別に、俺達がお前の手足になってやる」
「はいい!?」
「団長……それ、本気?」
「ワタシは反対ね! そいつはまだ正式に蜘蛛に入たわけでもない部外者よ!」
「だが、そもそもこれはポーの実力を見るための潜入だ。ただ俺達の後についてくるだけでは、仕方がないだろう?」
「それは……そうね。でも……!」
フェイタンさん、頑張って! もっといつもみたいに強気に反論しちゃって下さい!!
フレーフレーと、心の中で必死に触手を振りながら、応援する私。
しかしながら、蜘蛛の暴走ストッパーでもある彼の口から零れたのは、諦めの意を含んだため息だった。
「……チッ! 今回だけね……」
ブレーキが壊れた!!
「ええええええっ!? ちょっ、ちょっと待って下さいよ! 潜入なんてそんな、やったこともないのに……!!」
しかも、初めての潜入がマフィアのアジトなんて、どんだけスパルタなんだ、幻影旅団!
これはシルバさんを凌ぐスパルタっぷりと見た……!
「異論は認めない。最初に忠告しておくが、相手はアングラオークションを取り仕切る大物マフィアだ。拳銃、マシンガン、グレネ―ド、果ては対戦車用の機関銃まで、豊富な武器を備えている。わざと不合格を狙ってヘマをしようものなら、俺達全員、揃って蜂の巣だ……趣旨は理解したか?」
「……はい。充分に」
うわあああ、もう、どうしたらいいの!
こんな仕事、きっとイルミだったら、お茶漬けかっこむみたいにさらさらっとやっちゃうんだろうな……。
ちょっと教えてもらっといたら良かったな……うう。
会いたいよ、イルミ。
ハンター試験のときは、困ったらいつでも隣にいてくれた――危ないときはいつも、ギリギリで力を貸してくれた。
強くて厳しい、私のお師匠様。
でも、今はいないんだ。
入団試験を受けることを建前に旅団とともに行動し、クラピカを止めると決めたんだ。
自分で、決めた。
だから、どんなことがあってもやり遂げないと。
どんな時でも――最後まで、自分の力を信じて。
ふと、心の中で、黒髪の少年が笑った気がした。
「……分かりました。では、潜入するにあたって、まずは必要な物を買い出しに行きたいと思います。ちなみに、アジトの場所は分かってるんですよね?」
「ああ」
「それはバッチリだよ。でも、何を買いに行くの?」
タブレットを片手に首を傾げるシャルナークさんに、にっこり笑って私は答えた。
「具現化系の、オーラを買いに」
***
ヨークシンシティ某所。
アングラオークションを取り仕切る大物マフィアのアジト……なんて、どんな巨大なビルだろうと思っていたら、辿り着いたのはメインストリートから少し離れたビル街の狭間だった。
意識していなければ、うっかり通り過ぎてしまうほどの小さな酒場がある。
怪しまれないように、少し離れた場所から様子をうかがっている私達。入り口に見張りらしい人間はおらず、午前中だからか、出入りしている者もいない。
「ほ、ほんとにあそこなんですか……?」
「うん。表向きは会員制のバーなんだけど、中にヒミツの裏口がある。アジト自体は地下だよ。この辺のビルの下一体に、蟻の巣みたいに広がってるけど、入り口はここ1カ所だけ。さ、どうするリーダー?」
どうすると言われましても……。
ウボォーさんやノブナガさんなら、どかーんと真正面から乗り込んで行くんだろうなあ。
イルミなら、きっと関係者の誰かに針を刺して潜入の手引きをさせるか、針で変装して潜入するはずだ。
同じ操作系のシャルナークさんがいるから、一つ目の手は真似出来るかもしれないけれど、そもそも関係者が誰かも分からない以上、操りようがない。
その他で、潜入できそうな手は――
うーん、と下を向いたとき、丸い物が目に入った。
「……あ!」
マンホールだ。触手を使ってガコン、と外してみる。中は真っ暗だけど、ザアザアと水の流れる音がしている。
「これだ!」
「なるほど、地下水路から侵入するつもりか」
「水の中なら見つかりにくいし、オーラの消費も最小限ですみます。加えて、念能力もパワーアップ! 一石三鳥とはこのことです!」
「水路ね……侵入経路として考えてはなかったけど、配水管の配置図も建物のデータにあるからね。ちょうど、地下三階の排水溝から出れば、メインコンピュータのある部屋の手前まで大きくショートカットできる。ただし、そこまで息がもてばの話だけど」
「私と一緒なら、息し放題ですよ! ただし、念の泡の外には絶対に出ないで下さいね」
『驚愕の泡(アンビリーバブル)』発動!
四人まとめて、ぷるん、と包み込む。
「ふむ。この泡の中なら、水中でも息ができる……と。防御以外にもこんな使い道があるのか」
「本来はこっちがメインの使用法なんですけどね。防御力が高いのも、水圧に耐えきるためなんですから。さあ、行きますよ-!」
マンホールの中に飛び込んでいく。
底の見えない暗闇は、ある瞬間から水面を割って、冷たい海水へと切り替わった。
流れは思っていたよりも緩やかで、否応にも深海を彷彿とさせる。
どこよりも深い闇の底。
沈黙と静寂が支配する水の檻の中を、ゆったりと泳いでいく。
「ああ~……気持ちいい……! ほんとに深海に潜ってるみたい……!」
「どこが気持ちいいね……お前、やぱり変わた奴ね。こんな先も見えない闇の中、怖くないのかね?」
「ぜーんぜん! こんなの、昼下がりのコーヒーブレイクみたいなもんですよ!」
「ポー、次の分岐点、右ね。……俺も、フェイタンと同じでちょっと理解できないんだけどな。光の世界で名をはせる、超売れっ子ハンターの君が、どうして闇を好むのか」
「どうしてって……」
たしか、クロロ団長にも似たようなことを聞かれた気がする。
そんなに不思議なことだろうか。
「深海って……誰もいないから好きなことができるし、何をやっても誰にも文句言われないし、時間の流れもあってないようなものだから、すっごく自由なんですよね。そこに生きている生き物たちも、好き勝手に進化していて面白いし! ……イルミと会ってなかったら、私はずっとあそこにいたかもしれません」
分岐点を右へ左へ。シャルナークさんがタブレットを見ながら出してくれる指示を頼りに、闇の中をぐいぐい進んでいく。
唐突に、クロロ団長が聞いてきた。
「ポーはイルミのどこが好きなんだ?」
「ぶはっ!?」
あ、泡が乱れる……!!
「ここ、こんな時に変なこと聞かないで下さいよう!」
「団長としては、団員の恋愛事情をある程度把握しておく必要があるからな」
「初耳ね」
「ほんと、初耳」
「――で、どこが好きなんだ?」
「で、じゃないですよ! どこって言われても……そうですねぇ、最初は、その類い希なる捕食能力に惹かれたわけですが」
「ほう」
「イルミとは、ハンター試験で出会ったんです。その時の私は、念能力も今のように使えなくて、ただ無駄にオーラを垂れ流しているだけの、ひよっこだったんですけど。それを、イルミが一から鍛えてくれたんですよね。念のお師匠様になってくれて……大事な試験中だったのに、私のために時間を割いてくれたんです。ものすっごく厳しかったけど、や、優しいなって……!」
「え!? じゃあ、馴れ初めはハンター試験だったってこと!? あ、次は左ね」
「俺も今年受験しておくべきだったな……」
「そんなことよりもね! その話が本当なら、お前は念を覚えてからまだ一年も経ていないことになるよ。なにをどう鍛えたら、そんな短期間でここまで強くなるか」
「つ、強いか弱いかは分かりませんけど、ハンターになってからはずっと深海に潜ってばっかりでしたよ? もう、とにかく世界中のどこのどんな海にでも適応して、底まで潜ってみたくって。そこで出会う生き物全てを調べて、食べてみたくて――」
「……まさかお前、この能力で深海に潜てるのか? 潜水艦じゃなくてか?」
「はい! 潜水艦は、研究拠点として使ってますけど。私は素潜り専門です! 途中で休憩を挟みますが、最高で8000メートルくらいまでは潜れますよ。滞在記録は、一週間です!」
「……」
「なるほどな。ウボォーギンの拳が通じないわけだ」
「……ポー、ここの突き当たりが入り口だからね」
「はい! あ、ここですね。じゃあ、水面に出ますよー」
ぱしゃん、と水の中から顔を出す。三メートルほど上に四角い金網が何枚か張ってあって、そこから電光の明かりが漏れていた。
人の気配は、無いみたいだ。
テンタ君で金網を押し上げて、四人一緒に排水溝の外へとよじ登る。
なんとも殺風景な部屋だった。床も壁も天井も、コンクリートの打ちっ放し。いかにもマフィアのアジトらしく、壁には沢山の弾痕が空いている。
「へえ。ここは、どうやらダストのようだね」
「ダスト? ゴミ捨て場って意味ですか?」
でも、ゴミなんて塵一つ落ちてないのに。
きょとんとする私に、シャルナークさんは笑顔で、
「うん。またの名を、死体処理場」
「ひゃああ!!」
「うるさいね。潜入中に騒ぐな……殺して水に蹴落とすよ?」
な、なるほど……そのための排水溝なんだ。
てことは、さっき泳いでいた水の中には――や、やめよう! 深く考えるのは。
この部屋の扉には、鍵がかかっていなかった。
外に出て、道なりに進んでいくと、今度は打って変わってオフィスビルを思わせるような通路に出る。
「さて、ここから先は至る所に監視カメラがあるみたいだね」
「見張りの気配もするね。人数、かなり多いよ」
「無事にデータを盗み出すまでは、戦闘は出来るかぎり回避しろ。敵に見つかるな。騒ぎを起こすな」
ち、注文が多いんだから全く……!
でも、そのためにコレを買ってきたんだもんね!
ごそごそ、服の下から取り出した物は……。
「スルメイカ!」
「あのね、仮にも女の子がド○えもんみたいに出さないの」
「お前……わざわざ買い出しに行てきたのはそのためかね」
チャキ……と、仕込み刀に手をかけるフェイタンさん。
「ふぁっへ、ほへははひほふぁふへはへはひんへふよ!?」
「喰いながら喋るんじゃないね!」
「それがないと隠れられない、とはどういうことだ?」
おお、団長さん。今のを聞き取るとはやりますね。
むぐむぐ、口にほおばったスルメを飲み込んで、
「『嘘つきな隠れ蓑(ギミックミミック)』!」
「!」
「消えた……だと?」
姿を消して、クロロ団長の目の前に再び現れてみせると、黒目がちな双眸がまん丸になった。
「――と、いうことです。一回約三分。残りのスルメは三枚。一枚につき二、三回は発動できるかな……これでなんとか乗り切ろうかと」
「一昨日、カフェで捕まえたはずのお前が、急にいなくなったのはこの能力のせいか」
「ワタシの目の前で消えたように見えたのも……本当に消えたからだたわけね」
「そういうことです。もともと目に見えにくい私のオーラを可視化させて、周りの風景と同化させる具現化系の技ですが、はっきり言って苦手です。制限時間もあるので、サクサクいっちゃいましょう。シャルナークさん、扉の解除や、ナビゲーションをお願いします。フェイタンさんと団長さんは、見張りがいたら近づくので気絶させて下さい。少しでもオーラを補給したいので、殺さないように気をつけて下さいね」
「わかたよ」
「ふっ……いいだろう」
「では、行きます。『驚愕の泡(アンビリーバブル)』&『嘘つきな隠れ蓑(ギミック・ミミック)』発動!」
通路に出てすぐ、セキュリティーロック付きの扉に突き当たった。
パスワードを入力するパネルに、シャルナークさんが複雑そうな機械を繋いで数秒、あっという間にロックが解除される。
まるでスパイ映画のような、鮮やかな手際だ。
優しそうでほがらかなお兄さんに見えても、こういうところは流石、幻影旅団……感心しつつ、そっと扉を開いてみる。
見張りは1人。いかにもな黒服姿の男が、廊下を巡回している。
さて、いよいよだ……。
「では、さっき言った手順で。ちなみに、声は泡の内壁に跳ね返って相手には届きませんから、出しても大丈夫です」
「ああ、分かった」
姿を消したまま扉をくぐり、見張りの一人に近づいていく。相手が気づかず踵を返して、ガラ空きになった背中が見えた瞬間、
「俺がいこう」
出た……!
クロロ団長の手刀……あの、快楽殺人者の殺し屋さんしか見抜けなかった、恐ろしく早い手刀が目の前で……!!
や、やったあ、凝してたから、ギリギリ見えたもんね!
私でないと、見逃しちゃうね!!
「仕留めたぞ。で、どうする?」
「――はっ、い、いけない。つい見入ってました。ええっと、それじゃあオーラを吸い取って――」
姿を消しながら触手を出すのは不得意だから、素早く食べないと。そんなことを思っているうちに、別の足音が近づいてきた。
今度は三人。曲がり角の向こうから現れるや否や、倒れている見張りに気づいて駆け寄ってくる。
「な、なんだ、どうした――うぐっ!」
『見えない助手達(インビシブル・テンタクル)』!
狙うは三人の首の精孔。いずれも念能力者ではない、一般の人間だった。吸収できるオーラはごく僅か。
とりあえず、意識を失うまで吸い取って、邪魔にならないように壁際に置く。
「うーん。やっぱり一般の人は薄味だなぁ……こくもないし、旨味もないし、あんまり美味しくない。シャルナークさん、口直しさせて下さいよ~!」
「ん? ドリアンだけど、いいの?」
「根に持ってたんですか!?」
「シャルなんか食べたら腹壊しそうね。ふん……だが、なかなかいい手際ね。力を吸い取られたものの、死んではいないのか」
何故だ、というように、フェイタンさんの冷たい視線が私を貫いた。
「殺し屋に嫁ぐつもりの女のくせに、殺しは嫌いかね?」
「いえ……好き嫌い云々の前に、獲物を殺すとせっかく吸い取ったオーラが消滅しちゃうんですよ。もちろん、オーラを消滅させずに仕留める――いわゆる生け絞めと呼ばれる方法はありますが、魚介類ならともかく、人間をそんな風に仕留める技術は私にはありません。さあ、スルメもあと一枚しかないんですから、ひゃっひゃひょふははひはひょう!」
「スルメ喰いながら話すなね!」
この潜入の指揮権は私にある――そう、クロロ団長が言った通りだった。
クロロ団長、フェイタンさん、シャルナークさん。それぞれが、文句も言わずに私の指示に従ってくれる。
そのお陰で、見張りだらけのアジトの廊下を、散歩でもするような気楽さで進むことができた。
今、この瞬間、私はこの小さな蜘蛛の頭であり、彼等は手足なのだ。
私の決定に、全員の生死がかかっている責任。
そんなものを、いつでもクロロ団長は背負って生きているのだろうか。
私は――正直、怖くてたまらない。
だから、絶対に失敗するまいと思う。
想像するんだ、ここは海の中。私達は、四人でひとつの生き物になる。
獲物に見つからないよう姿を消し、静かに背後に近づいて、仕留め、食らう。
ただ、それだけだ――
扉を開いては廊下を進み、見張りを処理しては、また進むを繰り返すこと、数十分。
辿り着いたのは、今までよりも一回り大きな扉の前。手際よく電子ロックを解除しながら、順調だね、とシャルナークさんが微笑んだ。
「次の部屋が、例のメインコンピュータの管理室だよ。正直言って、こんなにスムーズに進めるとは思わなかったな。意外とむいてるのかもね、盗賊稼業」
「やめて下さいよ……海に潜ってる方が、よっぽど気が楽なんですから」
「ま、殺し屋の弟子にしては及第点ね」
「うちの強化系の三人に比べたら、よほど使えると思うがな。ただ、オーラの補給源がスルメイカなのが唯一の欠点だ。スタイリッシュさに欠ける」
「ふぉんはほほふはへまひへも……」
「だから、喰いながら喋るのは――」
やめろ、と言いかけたクロロ団長が、何かに勘づいたかのように動きを止めた。
同時に、電子ロックが解除されて扉が開く。
その向こうには――
「どうやら、先客がいたようだな」
「イルミ……」
いや、正確には、イルミが潜入した痕跡……というべきだろう。
マフィアのメインコンピュータ管理室。そこにいる全ての人間が、後頭部にぶっつりと針を刺されて静止していたのだ。
生体オーラは消滅していない。心臓が動いているということは、生きているのだが。
彼の操作系のオーラが、心臓以外の活動を強制的に制限している。
だから、生かしたままここまで完璧に保存できる。
「すごい……流石イルミ、活け締めのお手本のような手際だなぁ」
「暢気だな。近くに潜んでいたら、確実に戦闘になるぞ……お前を巡ってな」
「大丈夫ですよ。針の残存オーラから見て、1時間ほど前の処理です。あと数分は持ちそうですし、今のうちにデータを盗んでしまいましょう。シャルナークさん、お願いします」
「はいはい。わりとドライなんだね、ポーちゃん」
そんなことないですよ。
呟いた声が、潤んでしまった。
イルミがここにいたんだ……誰も殺していないということは、おそらくは、私達と似たような目的で潜入していたに違いない。
この部屋に辿り着くために、水路以外は同じ道を通って来ているだろうに。
彼の気配に、全く気がつかなかった――
「これが、イルミの仕事なんだ……」
「軽蔑したか?」
楽しそうに言うクロロ団長を、振り返る。
「まさか……むしろ、尊敬します! どうやったらこんな風に獲物を極限まで傷つけずに動きだけを封じられるんだろう……! 今度しっかり教えてもらわないと!」
「……そうか。手刀でよかったら、俺が手ほどきしてやってもいいが」
「さっき見張りを倒した、私でなくちゃ見逃しちゃうね的に早い手刀ですか……!?」
そ、それは是非ともご伝授頂きたい!
「今すぐお願いします!!」
「こらこら。残念ながら、今はそんな時間はないよ。はい、団長。ご所望のリスト」
「ああ」
さすが、シャルナークさん。仕事が早い。私達が話をしている間に、さっさとデータを盗んでしまったようだ。クロロ団長は、彼が笑顔で差しだしたUSBメモリーを受け取り、コートの裏ポケットに仕舞い入れた。
「よし。撤収だ」
「了解です。じゃあ、スルメも後一枚しかないことですし、さっきと同じルートでへっひゅふひはひょふ!」
「だから、喰いながら話すなね!」
***
アジトの近くは危険だというので、もときた排水溝から水路を通って、ヨークシン港付近にまで戻ってきた私達。
人気の少ない路地のマンホールから、ひょっこり顔を出し。
「やった! ミッション完了ですね!」
「ああ。皆、ご苦労だった」
「やれやれ……想像以上に簡単すぎて張り合いがなかたね。ポー、お前、本当に潜入は初めてか」
「はい。でもちょっと、アリアナ海水深3000メートルの海底奇岩帯に生息するアリアナダイオウチンアナゴの巣を調査に行ったときのことを思い出しました。平均体長30メートル、体重15トン。肉食の凶暴なチンアナゴで――」
「魚の話はもういいね! 全く、お前の頭には魚介類のことしかないのか」
「だってそれが本職なんですから、仕方ないじゃないですか。それで――クロロ団長、これからどうするんですか?」
「そうだな。リストは借宿に戻ってからじっくり見るとして、後は正午まで特にすることはない。イルミに勘づかれない程度なら、見たい物を見に行ってかまわないぞ」
「ほんとですか!? それなら是非、ヨークシン港で行われる戦艦オークションの下見に!!」
「は? そんなもの見に行てどうするつもりか」
「いやあ~! 実は、競り落としたい物があるもので……」
「ふむ。そういえば、初めて会ったときにもそんなことを言っていたな。戦艦か……悪くはない」
「俺もそういうの好きな方だし、港もすぐ側だから、寄ってみてもいいんじゃないかな?」
「本当ですか? ありがとうございます!」
よかったあ~! よく下見もせずに、空母を競り落とすわけにはいかないからなあ。
本当はイルミと一緒に見に行きたかったけど、贅沢は言っていられない。
路地を出るとすぐ港だった。ヨークシン港は広い。先日、イルミと行った旧港街もその一部で、漁港、商業施設、工業施設、果ては軍事施設までが併設している世界屈指の港なのだ。
ミルキくんに貰った雑誌によれば、戦艦オークションが開かれるのはその一角。
物々しい装備を取り付けた軍艦や、巨大な潜水艦。小回りの聞きそうな小型戦闘艦。最新型の船から、数々の歴戦をくぐり抜けてきたようなレトロな型の戦闘艇がずらりと並び、多くの観光客や戦艦ファンでごったがえしている。戦艦グッズを売り出す露天も並んで、大賑わいだ。
そして、今回。
私にとっては一番の目玉商品が、港のすぐ近くに悠然と浮かんでいた。
うわあああああああああああああああああああああああああ……!!
身体中に痺れが走るほど、ゾクゾクする!!
「……大きいなあ! 空母って本当に大きい……!」
「当たり前ね」
「メリカナ製ニミッツ級空母、“シースター”か。ちょっとした小型都市なら、上にのっちゃいそうだよね」
「ふむ……あの漆黒の船体はなかなか良いセンスだ」
「でしょう! むちゃくちゃ格好いい子ですよね!! 船首から船尾にかけての、あの滑らかなラインも……! 他のゴツゴツ系の空母とは、優美さが違いますよ!! それに、空母としては中型ですが小回りも効く方で急な旋回もすばやく正確に――」
「はいはい、ポーは船も好きなんだね。それにしても、込んでるな。なんだろう、あそこの人混み。なんだか、ものすごい列になってるみたいだけど……」
「――! あののぼりは」
青空に映える漆黒ののぼり旗。四つ丸の研究室マークとともに、“パドキア海洋大学深海研究学部特性!! ワカメコンブ君プリンバージョン出張販売中!!”の文字がはためいている……!!
まずい!!
「あのプリンは……!! おい、行くぞお前達」
「ええ!? もしかして並ぶの団長!? あの大行列が見えないの!?」
「欲しい物は全て奪うまでだ。あのプリンはヨルビアン大陸の東端、パドキア共和国に位置するとある学術機関で極秘に研究開発された幻のプリンだ。卵、牛乳を一切使用せず、ワカメやコンブから抽出した海洋性コラーゲンのみで作られているという。もはや、プリンとは言いがたい代物だが、食べたものの感想によるとこの世のものとは思えないプルプル感とのど越し、グルタミン酸の濃厚なコクを有するまぎれもないプリンだそうだ。現地で行われる小規模な物産展でしか、お目にかかれない幻のプリンだぞ。ここで盗らずにいつ盗るんだ! 今だろう!!」
「うわあ、いつにもまして饒舌――ちょっと、ポー。どこいくの?」
「お前、今更逃げる気か?」
「は、離して下さい、フェイタンさん! 駄目です、私はあそこへは行けないんですから!」
「却下だ。これは団長命令だ。全員、あの場から速やかにプリンを強奪しろ」
「駄目ですってば――!!」
だがしかし、必死の制止など気にもとめない幻影旅団団長、クロロ・ルシルフル。ガシッと私の腕を掴んで、有言実行、ゴーイングマイウェイの強引さで販売ブースに突っ込んで行く。
いらっしゃいませー! と威勢良く迎えてくれたのは、やっぱり……。
「先生!? よかったー! やっぱり来てくれたんですねっ!!」
「思ったより遅かったな。イルミさん、一緒じゃねーの?」
「なんだかちょっと悪そうな人タチだネ……誰?」
トモチカ、マサヒラ、カラの三人……そして、プリンの製作に販売に、とあくせく働いているスタッフも、全て私のゼミの生徒達だ。
先生、先生と声をかけてくる彼等の様子に、クロロ団長はくりっと首を傾げて振り向く。
「どういうことだ?」
「どういうもこういうも、パドキア海洋研究大学は、私が研究拠点にさせてもらっている大学なんですってば。この子達は私の教え子達です。このプリンも、海洋食品開発学科の子達が開発して販売してるんですよ」
「ほう」
顔見知りか……と、団長。
まずい……! こいつらを通じてイルミに知られたら面倒だ、全員始末しろ的なことを言い出さないうちに、とっとと撤退しなければ!
「トモチカ、マサヒラ、カラ! プリン12個、大至急、お持ち帰りで! 一人一個でいいですよねっ?」
「何を言っている。あるだけ全部寄越せ。ちなみに、全部俺のだ」
「子供みたいなこと言わないで下さい!」
「まーいど! じゃあ、一個おまけしときますよ。それより先生、聞きました? 昨日の夜の謎の海鳴り!」
ドライアイスとプリンを慣れた様子で箱に詰めながら、トモチカがメガネを光らせる。
「海鳴り……? いや、昨日は海から離れてたから。でも、そんなの別に珍しい事じゃないじゃない」
「ところがどっこい! 地元の漁師さんの話じゃ、あれは海鳴りじゃなくて、人魚の聲だって言うんですよ!」
「人魚?」
はいっと差しだされたプリンの箱を受け取ろうとしたら、横からクロロ団長にかっさらわれた。
流石、盗賊だ。
「まあ、海には何でもいるからね。非科学的だとは言わないけど……根拠はあるの?」
「あくまで噂です。でも、空全体が震えているような、すごい音でした。アタシにもあれがただの海鳴りだとは思えませんが、録音した音声を過去の生物データと照合しても合致するものがありませんでした。それで、そのせいかは分かりませんが、ここいら一帯の魚が一斉にいなくなってしまって……」
「え!?」
「網にもはえ縄にも、雑魚一匹かからなかったって言うんですよ。アタシ等はもともと、先生が“ヒトデちゃん”を競り落とすというので、その後の整備と運搬準備をするつもりで集まったんですが、漁港の騒ぎを放っておくわけにもいかなくて、うちの養殖場から出荷できそうな魚を輸送して卸したり、コネのある漁協に協力を求めたり、先生の指示なしで色々動いちゃったんです……その点はほんとすみません」
“ヒトデちゃん”というのは、おそらく、あの空母を示すニックネームなんだろうけど……シースター……海の星……ヒトデちゃんか。相変わらず、センスがいいんだか悪いんだか。
申し訳なさそうに頭を下げるトモチカ。彼女の横から、大きなソロバンを持った女の子が二人、ひょこひょこっと顔を出した。
黒いお団子頭のナユタと、白いお団子頭のセツナ。
海洋商業学科所属。うちの会計部の双子ちゃんである。いつもは潜水艦の会計室に入り浸っているから、こんな風に外に出てくるのは珍しい。
「心配無用」
「一攫千金」
パチパチ、とソロバンをはじくその姿は、なんとなく、白と黒の招き猫に似ている。
「……まあ、その辺は信用してます。それはそうと、“魚が一匹もいなくなった”っていうのが気になるなあ。誰か潜って調べてみたの?」
もちろん、と頷いたのはマサヒラとカラだ。
「海洋狩漁学科のメンバーで、海軍のボーダーラインギリギリまではなんとか調べてみた。沖合5キロ弱ってとこか。その向こうは船も人も一切、侵入が禁止されててさ。なんでも、オークションに関係してるらしいけど。刺激するのもなんだし、諦めた」
「やっぱり、オークション開催夜の大花火大会の準備じゃないカナ?」
「あ、あれアタシ行きたーい! 5万発だっけ?」
「いや、厳重すぎだろ!? 大型の警備艇が20隻ぐらい回遊してたぜ?」
「それは……ものものしいね。軍艦オークションの出品船の盗難を見張るため、とか?」
「流石、先生。アタシもそっちに一票です。で、そんなこんなでただ今ヨークシン中の魚介類が品薄なんですよ。街の露天商もあがったりって感じで。そこで、うちの会計部の計らいでプリンを売り始めたら、こんな人気になっちゃって」
「千客万来」
「商売繁盛」
がっつりがっぽり、いつでも商機を見逃さないこの双子……うちの研究室の資金源は、彼女達の手にかかっていると言っても過言ではあるまい。
「そういうことなら頼むよ、二人とも! 足りなくなったらイルミがカンパしてくれる約束だけど、どうなるか分かんないんだから!!」
「責任重大」
「任務遂行」
こっくり、頷く双子達。
プリンは一つ400ジェニー……うう、でも、こつこつ稼いでいくことが大事だもんね!
忙しそうに働いているメンバーをよく見ると、普段は潜水艦の中に閉じこもっている研究員や、機工学部のメンバーもいる。まさに、うちの研究室が総動員でかり出されているらしい。
プリンを作るのに、試験管やビーカー、メスシリンダーを使用しているあたり、いかにもうちっぽいなあと眺めていたら、クロロ団長に肩を叩かれた。
「おい、そろそろ行くぞ。プリンも腹一杯食ったことだし、もうすぐ正午になる」
「全部たべちゃったんですか!? おまけの分もあったのに!」
「プリラーとして作りたてを食すのは当然だ」
噂に違わない、いや、それ以上のすばらしいプリンだった。例えるなら、プリン界に降臨した破壊神とでも言うべきか……と、恍惚とした表情で語る団長に、シャルナークさんがアンテナを振りかざす。
「俺も食べたかったのに……クロロの馬鹿!!」
「シャル、ワタシも加勢するね……!」
「ちょーっと二人とも!! 団員同士のマジギレは禁止なんでしょうが!」
あろうことかクロロ団長に襲いかかろうとする二人をテンタ君で阻止した所に、トモチカがひょいっと紙袋を差しだした。
「はい、追加の13個。今日までの賞味期限で申し訳ないですけど、皆さんで食べて下さい」
「悪いな」
「団長はもう食べちゃ駄目だからね! ありがとう、君、元気良くってかわいいね!」
「シャルは手が早いね……」
「うちの生徒に手を出したら深海8000メートルまでランデブーしますからね」
もうほんと、ぺっちゃんこにしてやるんだから。
嘆息しながら紙袋を受け取ったとき、トモチカがくすっと意味深に笑った。
「“ヒトデちゃん”の出航準備、整ってますから」
「へ?」
「絶対に競り落として下さい。先生の手を離れたら、あの子――とあるマフィアのカジノ船になっちゃうそうです」
「心配しないで! 何が何でも競り落としてみせる!!」
頑張って下さいね――! と、声援を送る生徒達に見送られつつ、その場を後にした私達。
人混みを抜けたところで、ぼそっとクロロ団長が呟いた。
「女子大生か」
「あらゆる意味で、手を出さないでくださいね。まだ念も覚えてない、ひよっこ達なんですから」
「何……?」
ぴたり、とクロロ団長が足を止める。そして、なにやら思案気な瞳で私の目をじっと見つめ、
「……フッ」
「な、なんですかそれ! 言いたいことがあるなら、ちゃんと言って下さいよ!」
「いや? ただ、ポーにも盲点という物があるのだなと思ってな」
クックック、と楽しそうに笑う団長さん。どうやら、質問に答えてくれる気はないようだ。
「教えてくれないなら、もういいですよ。それで、待ち合わせ場所ってどこなんですか?」
今度は危ない場所じゃないといいけど。お昼だし、どこかのレストランとかだったら嬉しいなあ。
しかし、次に放ったクロロ団長の一言が、そんな私の暢気な希望を無慈悲に粉砕した。
「蛇窟街だ」
「――!?」