今回はゾル家でバイトシリーズ(笑)キルアです。
と言っても、バイト実行のお話でわなく…
「奈々実様おはようございます。」
「おはよう。」
広間にはいるとゴトーさんが丁寧に挨拶してくれると同時にコーヒーを入れてくれた。
「こちらが今月の依頼一覧です。」
そう言ってゴトーさんから手渡されたファイル。
「なんかごつくない??」
「はい。今月からシルバ様とキキョウ様が結婚記念日のご旅行に2ヶ月ご不在となりますので、お二人の分がこちらに。」
真顔で恐ろしい事を言うゴトーさんに私は頭を抱えた。
「まじで!!!???」
「はい。」
私は大きなため息をつきながら、ゴトーさんに質問をした。
「これって、ゼノさんや、イル兄と振り分けしていいの??」
「かまいませんが、お2人も、いつもと同じ程度のお仕事を抱えていらっしゃいますよ?」
「あはははは…。
わかった。」
私は諦めながら、ペラペラとファイルをめくった。
「早急な依頼は前に入れてありますので。」
「わかった。ありがとう。」
「でわ朝食の用意をさせていただきます。」
「よろしく。あっ!今日からガッツリ目でよろしく。」
そう言うと一瞬目を見開いたものの、眼鏡をさっとあげると、いつもの表情に戻った。
「かしこまりました。」
そう言って静かに広間を出て行った。
「やばいな~…。
ゼノさんには無理させられへんし、ミルキは外には出ーへんし、カルトちゃんが出来そうな仕事も少なそうやし。
イル兄どれくらい余裕あるかな??」
「俺がなんだって??」
私はぶつぶつと独り言を言いながらファイルをめくっていると、後ろからイル兄の声がした。
「あっ、イル兄おはよ。
今月の仕事なんやけど…。」
そう言って振り向くと、イル兄は『なに?』と言わんばかりにコテリと首をかしげていた。
「シルバさんとキキョウさんが旅行行ってもたから、こんな事になってしまいました。」
私は眉毛をハの字に下げてイル兄にファイルを見せた。
「うわ。なんかすごい分厚いね。」
「うん。やばいです。」
「少しなら手伝えるけど?
俺の仕事と同じ方面とかあるかな?」
「本間!?
イル兄ファイル持って来て!!」
私はとたんに目をキラキラさせてイル兄を見ると『しょーがないなぁ』と言いながらファイルを取りに戻ってくれた。
結局50件の仕事のうち10件程をイル兄に頼んで、残り40件。
(1ヶ月は30日しかないんだぞ~~!!!!!!)
と心の中で叫びながら、私は仕事の段取りを組んだ。
**********
まずい…
これは絶対まずい…
どう仕事を組んでも2件漏れてしまう…
「うをぉぉぉぉ!!」
思わず広間で雄たけびをあげてしまった。
「奈々実朝から何叫んでるんだよ??
それより天気もいいし、ゴンが今クジラ島に帰ってるらしいから遊びに行こうぜ!」
キルアは何の悪気もなく言った言葉に、この仕事の状況に追いやられていた私の中で何かが切れた。
「クジラ島??」
「そう。ミトさんの料理うまいんだよな~。」
相変わらず能天気に楽しそうにしているキルアに私は地響きのする様な声で返事をした。
「勝手に行って来い。
私は休みもない。取れるわけもない。今月も、きっと来月も…。
勝手にクジラ島でもゴルドーでも行って来い!!!!!!」
キルアからすれば何の前触れもなく突然真黒なオーラをまとって私が切れたのだ。
「うわぁぁぁ~~!!!!」
それはそれは素晴らしいスピードで広間を出て逃げて行った。
廊下をすごいスピードで走って逃げたキルアはそのままイル兄の部屋へと逃げ込んだ。
「あれ?キルどうしたの?」
突然真っ青な顔をしたキルアの登場に表情はそのままだが、びっくりしたイル兄。
「奈々実がクジラ島に遊びに行こうって言ったら切れた。」
ガタガタと震えながらベッドに潜り込むキルア。
「だからってなんで俺の部屋?しかもベッドに?」
「だってイル兄くらいしか菜々実とやり合えないじゃん。」
「嫌だね。」
「へ?」
「奈々実とやり合うなんていくらキルの頼みでもごめんだよ?
それに、さすがに切れる理由もわかるから、俺は知らないよ。」
「え??なんで切れたかイル兄わかるのかよ?」
「うん。」
理由のわからない自分とわかるイル兄。
キルアはとっさにベッドから飛び出すとイル兄前に座った。
「頼むから切れた理由教えてくれ!!」
「いいよ。
父さんと母さんが2ヶ月旅行でいないんだ。その分の仕事が菜々実に回ったんだ。
俺が10件程取ってあげたけど、まだ40件位あったんじゃないかな??」
あっさりといつもの能面みたいな表情で答えるイルミに対して、顔色がどんどん悪くなるキルア。
「40件?今月だけでか?」
「うん。ゴトーの出来る限り、じぃーちゃんやミルキ達に振ったみたいだけど、内容的に限度があるからね。」
「マジかよ…。」
「うん。内容見たけど、大きな仕事は俺と菜々実に振ってあった。本当なら2人で行くような仕事は全部菜々実に振ってあったと思うよ?
知らなかったとはいえ、朝から随分ファイル見ながら唸ってたから、謝った方がいいんじゃない?」
「俺謝ってくる!!」
来た時を同じくらいのスピードで駆けだしたキルアをイル兄は少しだけ目を細めて見送った。
「うちはどーも男が弱いよね。ま~しょうがないか。」
そんなつぶやきはキルアの耳に入る事はなかった。