ゾル家×バイト×シルバさん ②

 

 

 

 

「ウッヒョ~!!!!」

私は久しぶりのヨークシンの夜景に奇声を上げた。

「ヨークシンは久しぶりか?」

シルバさんは目を細めて何とも穏やかな柔らかい表情でジェット機のハッチを開けて夜景を見下ろしている。

「うん。なんか懐かしいぃ~!!」

私がヨークシンを訪れるのはこの世界に帰ってきてから始めての事だった。

相変わらずのシルバさんの表情を横からじっと見つめてしまった。

「なんだ??」

「ううん。これから100人以上のマフィアを壊滅させに行く人間の表情とは思えんくて(笑)
余裕??」


私はコテリと首をかしげてイル兄の真似をしてみせる。

「相手が雇っている能力者次第だな。」

「どんな奴かな??
ま~とりあえず私は作戦通り正面から入って暴れてきま~す!!!」

そう言うなり私は空中を飛ぶジェット機から何のためらいもなく飛び降りた。

作戦と言うにはかなり荒い作戦(笑)

私は正面突破で出来るだけのマフィアを潰す。
シルバさんはその間に屋上から入って雇われている能力者を探し潰す。

もしもの時シルバさんから連絡が入る。その時は応戦しに行く事になっている。

私は大の字でヨークシンの夜景を見ながら地上へと落ちて行く。

直前で白虎を呼び出して背中に乗った。

「よし白虎!あそこのビルまでよろしくね。
みんなも出ておいで。」

その言葉と同時に青龍・朱雀が可愛い姿で私の両肩に姿を現した。

バイトを始めてからこんなに多人数のターゲットは初めてだったからか、私は少し緊張しながらも久しぶりの大暴れに胸が高鳴っていた。


「お邪魔します。」

ビルの前に降り立つと入口には強面のお兄さんが4人。
勝手に入るのも気が引けたので声だけはかけた。

お兄さん達が私の姿を確認すると同時に拳銃を構えるがその瞬間、朱雀の『烈火の道標(レッドアロー)』に射抜かれて右側の2人は跡かたも無く焼き尽くされた。

それを見た左側の2人は私目がけて発砲するも、玄武の『鋼鉄に砦(ブラックカーテン)』に弾かれると同時に白虎の『鋼の刃(ホワイト クロー)』で地の池に沈んでいいく。

「ごめんね。仕事やから。」

そう言い残して私はビルのドアを開け中へと入った。

 

銃声を聞きつけたマフィアたちは雪崩の様に姿を現すが、私の周りで暴れる青龍・朱雀・白虎に阻まれて私に近づく事すら出来ないまま、1階フロアー・階段・2階フロアーと死体と言うにはあまりにも無残な姿で自分達の血の海に沈んで行く。

私はまっすぐに4階の突き当りの部屋を目指して登って行くとあっという間に目的の場所までたどり着いた。

長い廊下をまっすぐ見つめると、目の前には能力者と思われる男がスッと姿を現し殺気を放っている。

麻のストローハットに赤いアロハに白の短パン、サンダル。
いかにも夏!って格好に肩まで伸びた黒いウエーブのかかった髪。

「そこどいてくれるかな?
私ゼンジって親父に用があるんやけど?」

私は相手に向かって殺気を放つでもなく笑顔を向けた。

「随分派手に暴れてる奴がいると思ったら、綺麗なねぇ~ちゃんじゃね~か?」

「暴れたつもりはないんやけど?進路妨害されたからどけただけ。」

「まぁ~マフィアと言えどもたかが一般人。
残念だがここで引き返してもらうぜ?」

「それは困るなぁ~。
あんたも邪魔やしそこどいて?」

私は徐々に募っていくゼンジへの怒りと、このおっさんのムカつく殺気に機嫌はどんどん悪くなる。

「なんなら俺の女にしてやってもいいぜ?
そしたら殺しはしないからよ?」

そう言って目深にかぶった帽子からムカつく様な視線をのぞかせた。

「遠慮しとくは。
私強くて男前な人にしか興味ないんよ。
あんたこそ死にたくなかったらそこどいて。」

「それがねぇ~ちゃんの念能力か?」

ニヤリと笑いながら肩に乗った四聖獣3体に視線を向ける。

「そうやけど?
なに?相手に能力は見せるなんて初心者とでもいいたい?」

「ご名答。」

「残念。私は相手の為にわざと見せてる。
自分が殺された能力も知らずに死ぬのは可哀想やろ?」

そう言って世間話をするかの様な口調と表情で会話を続けながら徐々に殺気を放っていく。

「どこの殺し屋かしらねぇけど、俺が相手だったのは運が悪かったな。せっかく綺麗なねぇ~ちゃんだからと思って優しくしてやったけど、俺は高飛車な女は嫌いでね?」

「調度良かった。私もあんたみたいなおっさん大っ嫌いなんよな!!」

私が言い終えると同時に相手は床を蹴って私へと飛びかかる。

「遅い。」

私は難なくそれを避けて相手の後ろを捕った。

「あんたこそ相手が悪かったな。」

そう言って硬で強化した右手で相手の首に手套をくらわした。

「残念やけどこのマフィアにかかわった時点であんたには死んでもらう。」

相手は声も出ない様子で眼球が揺れる中膝をついて固まっている。

今頃ハンター試験の時のゴンの様に脳みそガンガン揺れてるだろう。

そんな相手に容赦なく白虎の『鋼の刃(ホワイト クロー)』が襲い掛かった。

私は振り向く事もせずにゼンジのいる部屋のドアに手をかけた。

 

 


**********

 

 

 

その頃シルバさんはビルの屋上に降り立つと絶で気配を消し、私の目指す4階へと足を進めていた。

私が正面から突っ込んでいるのでシルバさんはゼンジのいる4階の奥の部屋の窓に姿を現していた。

「お前は確か??」

シルバさんは窓を割って入るなり、ゼンジの部屋のソファーでトランプタワーを作っている人物に眉をひそめた。

「こんにちは。
まさかあなたが来るとわ思わなかったよ。」

そう言ってゆっくりと立ち上がる。

「おい!ヒソカ!!こいつをさっさと始末しろ!!!」

ゼンジは突然の来訪者に身を震わせながら物陰に隠れて命令をしていた。

そう。ゼンジが雇っていた念能力者の1人はヒソカだった。

「この仕事受けてラッキーだったよ。まさか殺り合えるチャンスが出来るなんて。」

そう言って禍々しいオーラをシルバさんにぶつける。

「ふん。悪く思うな。これも仕事だ。イルミには俺から話しておく。」

「ふふふふふ。
下で暴れてるのは?」

「菜々実だ。」

「なるほど。ならすぐにここに来ちゃうね?」

「直に来るさ。
そしたらお前はどうする?」

「菜々実とあなた…
とっても楽しそうじゃないか。」

ニヤニヤとそれはそれは嬉しそうな表情のヒソカに少し呆れた顔のシルバさん。

廊下から私の声が聞こえるとそれを合図に2人はお互いに向けて床を蹴った。

 

 

**********

 

 

ドアに手をかけた瞬間部屋の中から大きな物音がして、私は慌ててドアを開けると同時に叫んだ。

「シルバさん!!」

部屋に入ると目に飛び込んできたのは、部屋の真ん中に立つシルバさん。

その視線の先には壁に埋もれて座っている知った顔。

「ヒソカ!!??」

私はあまりの驚きにその場に佇んでいた。

「やあぁ菜々実。やっぱりすぐ来たね?
ドアの外にいた彼は?」

「え??弱かったから廊下で死んでる…。」

「そう?それよりつっ立ってていいの?」

そう言ってヒソカが指す方を見るとゼンジが部屋から逃げだそうとしているところだった。

私はその顔を見た瞬間怒りが爆発。

「たった助けてくれ~!!!」

そう言って命乞いをするゼンジの襟口を掴んで立たすとなんのためらいもなく顔面を殴った。

そして倒れ込んだゼンジを見下ろした。

「クラピカに言った侮辱撤回しろ。」

自分でも驚く程低く冷たい声が口からこぼれて行く。

「何でもする!!命だけは助けてくれ!!」

その言葉に私は携帯のカメラを起動すると録画ボタンを押した。

ゼンジ床に頭を押しつけて土下座でクラピカへの非礼を詫びた。

それが終わると私はゼンジに背中を向けると、猛ダッシュで逃げて行く。

が、その後を朱雀が追って飛んで行く。

廊下から悲鳴が聞こえると同時に黒い柱が現れた。

数秒後。

廊下には丸い円の燃えた後だけが残っていた。

『黒炎の陣(ジャストブラックウォール)』黒い炎のはターゲットを包み込みなにもかもを焼き消す。

炎の威力は『烈火の道標(レッドアロー)』の10倍。

『烈火の道標(レッドアロー)』は触れた場所は消えてしまうが、『黒炎の陣(ジャストブラックウォール)』は囲ったなか全てを焼く消す。

 

「で?2人はいつまで殺り合ってるわけ??」

視線は今だにお互い引かずに戦い続けるシルバさんとヒソカ。

「折角のチャンスを逃すなんて僕には出来ないよ☆」

ニヤリと嬉しそうに微笑むヒソカ。

「攻撃されるからには対処するしかないだろ?」

そういって呆れた顔をするシルバさん。

「はぁ~~。
私仕事終わったから帰りたいんやけど…。」

私は大きなため息をつき、煙草を吸いながら2人のやり取りを見守っていた。


 

 

~おまけ~

 

数十分後。

「もしもし?」

『菜々実終わったのか?遅かったじゃん♪』

「仕事は終わったんやけど…迎えに来てくれへん??」

『迎え?』

「うん。ヒソカとシルバさんが遊んでて帰れへんからさ。
私も~~帰りたいの!!!」

『ヒソカと親父が!?』

「うん。なんでもいいからとりあえず迎えに来て。詳しくは後で話すから。」

私はジェットで迎えに来てくれたキルアと一緒にゾル家へと帰った。


シルバさんとヒソカを残したまま・・・・・・。