え~今回は経験した事ある女性は意外に多いかもしれませんね。←作者の周りでは(笑)
私も何度か経験した記憶が…
ってこんな事言ったらネタばれしそうですが(笑)
今回はばっちりキルア×菜々実ちゃんのお話です。
「ん…やっぁ…」
薄暗い静かな部屋に、シーツの擦れる音と甘い吐息だけがやけに大きく聞こえる気がする。
「奈々実…」
キルアのいつもより甘い声に反応する様に少しでも触れていたくて、触れてほしくて。
自分の腕をキルアの首に回しながら甘い時間が過ぎていく。
「ん…。」
ふと目が覚めると横にはキルアの幸せそうに眠る顔。
頭の下と腰に回された腕に私は幸せを感じながらキルアの胸に顔を埋めた。
ここ最近仕事も落ち着いていて一緒に過ごす時間は多く、幸せな時間を過ごしていた。
当たり前の様に肌を合わせて、目が覚めると大事そうに抱きしめられている事が内心嬉しかった。
そんな想いを噛み締めながらもう一度眠ろうかと思っていてふとある違和感を感じた。
(あれ?いつからこんな風に過ごしていた?
1週間?いやもっと長い・・・)
私は記憶をたどっていくとハッとした様に気付く。
(1ヶ月以上…)
1ヶ月以上何かに邪魔をされる事なく肌を合わせ続けている…
私はキルアを起こさない様にベッドから出ると、テーブルに置いてあった携帯のスケジュールを確認する。
1週間前に予定は過ぎている。
自分の中で可能性を考えると、何度か思い当たる事がない訳じゃない。
『妊娠』この2文字が私の頭に浮かび、不安を掻き立てる。
「奈々実?」
1人携帯を握りしめながら私は立ち尽くしていた。
そんな私に目を覚ましたキルアが不思議そうに私を呼んだ。
一瞬身体がビクリとした事を隠す様に私は笑顔で振り向いた。
「おはよ。ご飯食べに行こうか?」
「ああ。その前にそこの水取って。」
テーブルにおかれた水の入ったペットボトルを指差すキルアに私はすっとそれを差し出しベッドに腰かけた。
「奈々実今日仕事は?」
「会長に近状報告に行くくらいかな。朝ご飯食べたら出るけど、夕方には帰ってくる。
キルアは?」
「俺はイル兄の手伝いくらいかな。昼過ぎには終わると思うぜ。」
「そっか。じゃ~ご飯行こうか。」
私はそう言うと、羽織っていたパジャマの上着を脱いで、椅子にかけてあったマキシワンピースを着て広間に向かった。
朝食を済ませてふと煙草を吸おうと手を伸ばし、さっとその手を引っ込めた。
その瞬間キルアと目が合った気がして、私は慌てて立ち上がり『用意してくる』とだけ言い残して広間を出た。
**********
会長に報告を済ませて、雑談していると、ビーンズさんが工芸茶を入れてくれた。
「綺麗…」
目の前のポットにはブーケを入れた様に花が咲いていた。
「これは千日紅と百合花の花です。
花開吉祥と言います。」
「香ばしくていい香り。」
「何があったか聞かんが、少しは元気が出たか?」
「え??」
会長は一瞬ニヤリと笑ってお茶を飲んだ。
「ここに来た時から少し元気がなさそうじゃったからな。悩み事か?」
私は出来る限りいつも通りに振舞っていたつもりなのに易々と見抜かれた事に驚きながらも素直に答えた。
「悩み事って言うか…
まだはっきりした事がわからへんから何とも言えへんけど…。」
「キルアには相談したのか?」
「キルア??」
突然降って湧いた様にキルアの名前が出て私は少し動揺してしまった。
「あ奴の事での悩みで正解だった様じゃな。」
そう言って意地悪な笑みを浮かべている。
カマをかけられたと気付いて一瞬顔が赤くなったきがしたが、冷静を装った。
「まだ何も…」
「言いにくいことかの?」
「実は…」
私は今朝の事を会長に素直に話した。
1週間遅れている事。
心あたりがある事。
まだ確定した訳ではない事。
なにより、キルアの反応が怖いという事。
話した事で、自分の中でも整理が出来て少しスッキリした気がする。
「悩む事でもなかろうに。何を悩んでおるんじゃ?」
「え?」
「好きな相手との子供なんじゃ、喜ぶべき事はあっても、いつも元気なお前さんがそんなに落ち込む必要なかろろ?」
「それは…」
「困るのか?」
「困る訳じゃ…」
「ならちゃんと話して、一緒に医者に行くんじゃな。
レオリオに見てもらうのもいいかもしれんな。」
「レオリオか…電話してみようかな…」
「またわしにも報告してくれんかの?」
「はい。」
私は会長に挨拶して、家へと向かった。
「もしもし?」
『奈々実じゃねーか!?どーしたんだ?』
「あの…」
『なんだよはっきり言え。』
「1週間以上遅れてて…
毎月順調に来てたんやけど…」
『…!!妊娠したのか?』
「それがわからんくて電話したんやけどな…」
『そうか。今どこだ?』
「協会からククルーマウンテンに帰る途中。」
『なら調度いい。俺明後日そっちに用があって行くから、見てやるよ。』
「本間に!?」
『ああ。自宅でいいな?』
「うん。ありがとう。」
『じゃ~あさってな。』
私はレオリオと約束すると、大きなため息をついた後、覚悟を決めた。
家に帰ってみると、ヒソカとイル兄、キルアが広間で雑談していた。
「おかえり。」
「お帰り、お邪魔してるよ。」
「早かったじゃん。」
「ただいま。」
「美味しいワインを持ってきたんだ。飲もうよ。」
「…ごめん。ちょっと今日はやめとく。まだ仕事残ってるからしてくるな。」
私はそう言うと部屋に向かった。
仕事が残ってる事は事実だが、妊娠の可能性がある状態で、お酒はやめておきたかった。
「珍しいね。仕事があっても飲むと思ったのに。」
「夕食の時でもいいじゃないか。」
「…。」
黙って奈々実の出て行った方を見つめているキルアにイル兄が少し考え事をした後、キルアを見た。
「ねぇ?キル?」
「なに?」
「奈々実、最近変わった所ない?」
「変わったとこ?」
聞かれたキルアは今朝の携帯を持ったまま固まっていた事を思い出した。
「今朝、携帯見ながら固まってたんだよ。聞かなかったから何があったかはわかんないんだけどさ。」
「仕事で何かトラブルかもね☆」
「そうだね。もうちょっと様子見ようか?」
「うん…。」
キルアの瞳は不安げに揺れていた。