ドジ×喧嘩×ごめんなさい ②

 

 

 

 

それから数日後。

「じゃーそろそろ仕事再開しようかな!」

そう言って広間で大きな伸びをする。

「あいたた…」

伸びの衝撃で少し痛みを感じて脇腹をなでる。

「はぁ!!??
まだ無理に決まってんじゃん!?来週までは安静だっつーの!」


すかさずキルアに突っ込まれて少し落ち込む…


「大丈夫やってば!
おっきな仕事はまだせーへんから♪」

「そう言う問題じゃないだろ!?伸びしても痛くないようになってからな。」

テレビゲームをしていた手を止め、こっちを振り向くキルアの顔は本気で怒っていた。

「でも…。」

「でももくそもねぇの!来週までは安静!!」

有無を言わせないその物言いに腹が立ってくる。


「そんな怒って言わんくてよくない!?
無理はせーへんって言ってるやん!?」

「だから仕事自体無理してるのと同じだっていてるだろ!?
来週までは仕事もバイトも禁止!!」

「なんでキルアにそんな事決められなあかんの!?
私の身体なんやから大丈夫かどうか私が一番分かってるからいいの!!」

「禁止だって言ったら禁止!!」

キルアはゲームを放す代わりに私の腕を掴んで部屋へと連れて行く。

 

 

 

「あんな怪我した後に1週間もしないうちから仕事するとか何考えてんだよ!?」

「だって仕事も溜まってくるし、身体動かさななまるやん!」


「そんなんで仕事してまた怪我したらどーすんだよ!?」

「怪我するよーな仕事せーへんっていってるやんか!」

「そんなの信じらんねぇし!」

「信じられへんってどーゆー事!?」

「俺がどんな気持ちだったと思ってるんだよ!?」

「だから心配させたのは悪かったと思ってるってば!」

「だったら大人しくしててくれよ!
俺あんなお前もう絶対見たくないんだよ!」

「キルア…」

 

 

ドアの入口に立ったまま言い合っていたキルアの声が震えて瞳が揺れていた…

「もうあんな思いしたくないんだ…」

「ごめん…」

「俺、あの時菜々実の姿見たときもう駄目なのかもしれないって思ったんだ。
真っ青な顔して、びっくりするくらいの血の量で。」

「…。」

「何人も殺してきたから助かるか助からないか見たらわかる。でも、それが菜々実だったら俺判断出来ないんだよ。
怖くなるんだよ。」

「ごめん…。」

キルアは震える腕で私を抱きしめると存在を確かめる様にたくさんのキスを落とした。

「頼むから今週いっぱいは仕事するって言わないでくれ。」

「…わかった。心配させてごめんなさい。」

「わかってくれたらいいんだ。
とりあえず大人しくしてて。」

「はい。」

私はもう一度ベッドに潜り込むと部屋を出て行くキルアの背中を見つめた。

携帯を手に取るとミルキに電話をして部屋に呼んだ。



「菜々姉どーしたんだ?」

「ミルキごめん。聞きたいんやけど、この前私がキルアに連れて帰って来てもらった日の事なんやけど…。」


「ああ~あの日?
キルのあんな慌てた顔初めてみたよ。」

「慌ててた?」

「ああ、そりゃーもーこっちまで慌てちゃう程だったぜ?」

「そんなに?」

「ああ、。あ~事実慌てるような状態だったけどさ。」

「そんなにひどかった??」

「ひどいなんてもんじゃないよ。
紫の服着て行ったはずが血に染まって真っ黒だし、菜々姉は真白な身体で俺なんて死んでるんだと思ったくらい。」

「死んでる…」

「ああ。親父やじーちゃんも慌てて駆け寄ったけど、生きてるの確認してほっとしてたくらい。」

「そっか…ごめんな心配掛けて。」

「菜々姉が元気ならいいよ。」

ミルキはそう言いながら部屋を出て行った。

そっか…
そんなにひどい状態やったんや…

私はもう一度キルアにあったら時に謝ろうと決めた。

お風呂を済ませて、キルアの腕枕で寝る体制に入ってから私はキルアにそっとキスをした。

「キルア、心配掛けてごめんな。
助けに来てくれてありがとう。」


「もういいよ。
結局奈々実が元気ならそれでいいからさ。」


「うん。」

そう言って優しく髪を撫でてくれるキルア手が心地よくて私は甘えるようにキルアの胸に顔を擦り寄せた。

「煽るなって、俺我慢してるんだから。」


「なにが??」

ほんのり頬を染めたキルアは拗ねる様に軽く私を睨んだ。


「菜々実が怪我してるし、安静にさせなきゃって思ってるから…その…。」

そう言って視線を逸らす。

「??なんでもいいや(笑)」

そう言ってもう一度キスするとグッと腰を抱く腕に力が込められた。

「痛かったら言って。」

そう言って離れた唇を強引に元の位置に戻される。

「ちょっと!キルア!?」

「痛い以外は拒否権なし。」

そう言ってキスはどんどん甘く、深くなっていく。


結局私に気を使って優しく触れるキルアが愛おしくて、少しだけ痛みに耐えてしまいました…






~おまけ~

翌朝…


「げ!?」

「菜々実どうかした?」

眠そうな目をこすりながらキルアは私の何とも言えない声に目を覚ました。

「キルアの馬鹿…」

小さな声でそう言うとキルアはニヤリと笑っていた。

そう。身体じゅうに赤い印を刻まれていた。
傷のそばにも…。

「これじゃー恥ずかしくて受診出来ひんやんかぁ~~!!!!」

結局私は恥ずかしくて数日受診に行けずにキキョウさんに消毒を毎日してもらう事になってしまった…



~Fin~