菜々実ちゃんがゾル家でのバイトをする度に影でゴトーさんが困っていた事が…
それは一体??
今回はキルアと菜々実の絡みはほとんどありません。
ゴトーさんとカナリアを登場させたかっただけです。
ホントごめんなさい(笑)
「失礼します。」
ゾル家執事頭のゴトーさんが静かに広間へとやってきた。
「おお、わざわざすまんかったの。そこに置いておいてくれ。」
ゴトーさんはゼノさんに言われた場所に何やら大きなジュラルミンケースを8つ並べていた。
「では私はこれで失礼します。」
そう言って丁寧にお辞儀をして広間を出ていった。
~5時間前~
パドキア共和国デントラ地区のとある銀行の応接室…
黒いスーツ姿の男性2人は互いに少し困った顔をしながら何やら対話していた。
「うちとしましてはゾルディック家の方には大変お世話になってはいるんですが…何分急での大きな金額を現金でというのは少し手間が要りましてですね…」
「大変申し訳ありません。できうる限りで事前にお知らせ出きるようにはさせていただこうと思ってはいるんですが…」
「いえいえ、預けて頂いている身で身勝手を申しまして申し訳ありません。」
「いえ。こちらこそ申し訳ない。」
「では、4時間後には用意出きると思いますのでまたお越しいただけますか?」
「分かりました。では、失礼します。」
**********
「ふぅ~。」
執事頭専用執務室でゴトーさんは大きなため息をついていた。
「どうかされたんですか??」
今日の業務報告に来ていた執事見習いのカナリアはいつもと様子の違うゴトーさんに心配そうな眼差しを向けた。
「いや、何でもない。それより4時間後にもう一度銀行へ行く。
お前も同行しろ。」
「わかりました。」
カナリアは『銀行』と言う言葉に何かを勘付いた様子で部屋を出て行った。
**********
「ただいま~!!!」
「おお菜々実お疲れじゃな。
今回の報酬はそこに置いてある。」
「ありがとう!!」
ゾル家依頼のバイトを終わらせて屋敷に戻ってきた私は広間に着くとゼノさんと軽く会話をした後、テーブルに並べられたジュラルミンケースに手を伸ばした。
「うん。確かんいただきました。」
そう言って笑顔でゼノさんを見ると丁度広間のドアを誰かがノックした。
「はい?」
「失礼します。ゴトーでございます。」
そう言って現れたのはゴトーさんだった。
「あれ?珍しい。ゴトーさんどーしたん??」
「僭越ながら、今日は菜々実様にお願があってまいりました。」
そう言って深々とお辞儀をする。
「お願い??何かあったん??」
「実はですね…」
そう言ってゴトーさんの視線がテーブルに置いてあるジュラルミンケースに向けられる。
「ん???」
「こんなお願も差し出がましいのですが、報酬をその日ではなく後日でのお受け取りか、事前に依頼の日付を教えていただきたく存じます。」
「後日か、事前に??」
「はい。金額が大きいのでどうしても銀行とのやり取りに少し手間がかかりまして…」
ゴトーさんは頭を下げたまま困った様に話していく。
「菜々実様は報酬を現金でと仰せつかってはいるのは承知していますが、最近頻繁でして…出来れば振込か小切手では…」
私はゴトーさんの言わんとする事がわかると慌てて頭を上げさせた。
「あぁ~!!そう言う事か!ゴトーさんごめんな。
確かに毎度毎度この額現金で引き出すとなると銀行もゴトーさんも大変やもんな…」
「だが菜々実は現金主義じゃろ??」
「うん。基本何でも現金主義。一応銀行に預けてる分もあるけど…」
「なら現金でかまわんぞ。」
「うん。でもゴトーさん普段お願なんてせーへんのにしてくるって事はかなり大変って事やもんな…
わかった!!今度からは事前に言うわ!それが無理なら後日かその時は振込でいいよ♪」
「大変申し訳ありません。
10億位なら問題ないんですが、さすがにそれ以上になりますと銀行側も時間がかかるようでして…」
「そーよな(笑)早く気づけば良かった。
本間ごめんな。」
ゴトーさんは恐縮しながらも少しホッとした表情で部屋を出て行った。
「あのゴトーが頼むんだから相当キツかったんだろーな(笑)」
そう言って笑いながらキルアが広間へとやってきた。
「う~…悪いことしたな…」
「ま~でも良いじゃん。今度からは楽になるんじゃね~の??
でも菜々実なんで現金なわけ?」
「え???だって銀行つぶれたら困るやん。」
「そんな簡単につぶれないんじゃねぇーの??」
「だって私が全額預けたら利子だけでも相当な額になるやん。
しかももしもの時は全額補償してくれるわけじゃないし。」
キルアは紙幣カウンターで現金の確認をしている私の横でぼーとその風景を見つめていた。
「そもそもそんなけの金持っててお前どーすんだよ?」
「ん~家建てようかなって。」
「家??」
「うん。
今シルバさに頼んでるとこなんよ。」
「親父に??」
キルアは全く繋がらないとばかりに眉間に皺をよせながら聞いている。
「うん。ククルーマウンテンに建てようと思ってるからさ♪
その許可をね♪」
「おっお前ここに建てんのかよ!?」
「うん。だってキルアが家継がんのやったらお前が継がへんか?ってシルバさんが…」
「!!!!!」
あまりに唐突で、あっさりと私の口から出ている言葉にキルアは言葉を失い、身を乗り出しながら今にも目が飛び出ん程見開いていた。
「あかん???」
私は少し甘えるように上目遣いでキルアを見上げた。
「本気で言ってんのかよ!?」
「はっはっはっはっは!
キルアよ。既に菜々実はここ数カ月は依頼の半分を1人でこなしとるぞ??」
「はぁ!!??マジで!?」
「うん。最近頻繁やから…だからゴトーさん困ってるんやと思って。」
キルアは降参と言わんばかりに乗り出していた身体をソファーに沈めると大きなため息をついた。
「暗殺だぜ?一生ブラックリスト、いつも命狙われるんだぞ!?」
「うん。分ってる。でも、誰かが継がなあかんやろ?
キルアは継ぐ気ないし、イル兄も継ぐきはない。
さらにミルキは難しいし、カルトちゃんではまだまだやし。」
「事実シルバやワシよりも強い菜々実が継げば我が家も安泰じゃ。
ミルキやイルミも菜々実が継ぐことには反対せんじゃろ。」
「確かにそうだけど…」
「まぁ今すぐって訳じゃないし。
とりあえず家買いたいし、ジェットも欲しいし…」
「お前この前車買ったとこじゃん。」
「うん。車ないとなかなか不便でさ(笑)
ちなみに今そのおかげで飛行船改造中なんよな。」
「改造!?」
「うん。車の積み込み出来るように♪」
「それ全部現金払い?」
「もちろん!
私は何を買うにもいつもニコニコ現金払いです!!」
笑顔で答えていくとキルアはもうそれはそれは大きなため息をついた後額に手を当てながらもボソリと呟いた。
「まぁ~なんか菜々実らしい気がしてきた…」
「ごめんね。」
私はキルアの隣に座るとキルアの腕に自分の腕をからませてキルアにだけ聞こえるように謝った。
「もういいよ。菜々実に任せる。
お前がそれでいいならいいよ。ほんと菜々実には俺逆らえねぇーわ。」
そう言ってギュッと抱きしめられた。
「ふふふ。ありがとう♪」
ため息をつきながらも優しい笑顔を向けてくれるキルアに私は微笑み返した。
「そーゆー事で当分忙しいけどいい??」
「何時まで?俺遊びに行きたい。」
「OK。どっかで休み取ってパーっと遊びに行こうか♪」
私ははしゃぐように言うとキルアは嬉しそうな顔をしてくれた。
「ああ。どこ行くかは菜々実に任せる。」
「了解♪」
私達はパソコンで旅行のサイトを見て過ごした。
**********
「良かったですね?」
執事見習いのカナリアは執事専用の屋敷に戻ってきたゴトーさんとお茶を飲みながら話していた。
「ああ。ここ数か月でこんなにも現金を動かしたのは初めてだ。
菜々実様はああ言ってくれたが、少々心が痛む。」
「私、菜々実様が好きです。
優しくて強くて…何より菜々実様と一緒にいるキルア様が嬉しそうで。」
カナリアは優しい瞳で窓の外を見つめた。
「ああ。あんなに楽しそうに笑うキルア様を見れる様になったのはあの方おかげだな。
だが…さすがに今回は俺も骨が折れた。」
「そうですね…」
カナリアは苦笑いをしながらゴトーさんの机の上に置かれた湿布の箱に目をやった。
「一番多くていくらだったんですか??」
「150億…」
2人は顔を合わせて苦笑いで目を合わせると小さな笑みを浮かべた。
「ゾルディック家執事としてこれくらいの事はこなさなければならない。
ただ、銀行が大変だろう。近くの支店から現金を運び集める必要があるからな。
なんど小切手と振り込みでと頼まれたことか…」
「次回からはどうされるんですか??」
カナリアの質問にゴトーさんはスっと目を細めると眼鏡をあげながら当たり前のように言った。
「現金で用意する。それが菜々実様にとって一番だからな。」
大きなため息とは裏腹に優しい目をしながら湿布を手に取りカナリアをみた。
「もう少しお世話になりそうですね?」
「ああ、銀行の対応にはさすがに肩が凝るからな。」
これからも当分ゴトーさんは銀行とにやり取りで肩こりに悩まされそうです。
~あとがき~
読んでくださってありがとうございました。
本当は現金が重たくて…って事にしようかと思ったんですが、あのゴトーさんが数十キロくらいで腰や肩を痛める事はないな、と思って銀行とのやり取りでの肩こりにしてみました。