10 注意?×忠告?×ほっぺにチュー!!

 

 

 

 

 

 

「お疲れさまでした。ここが、二次試験会場です。従って、この場にいる全員を一次試験通過者とします」



「「「やったあ~~!!」」」



ゴンとキルアと三人で、ハイタッチをして喜びを分かち合う。でも、ゴンはふと緊迫した顔つきになり、ある一点を見つめた。



「レオリオ!!」



「あ、そうだった!おっさん!!」



 おっさ……キルア。



あのね、実はそのひと十代で、私はそれより歳上なんだ。



うう……なんて、落ち込んでる場合でもないか。



幸い、レオリオはすぐに見つかった。




木の幹に寄りかかって座って、ぐったりしている。



「レオリオ!」



「大丈夫!?」



「うう……あれ、ゴンにキルアにポー……?俺ぁ、一体どうしちまったんだ」



「ヒソカに殴られたあと、レオリオってば気絶しちゃってさ、それをヒ」



「お、俺とゴンとポーで、ゴールまで運んでやったんだよ!いやあ、大変だったぜ~、感謝しろよなあ」



「そうだったのか……三人とも、恩に着るぜ!!」



ナイス、キルア!



そうだよな~、よりにもよって、殴りかかった本人に担がれて運ばれたなんて知ったら、レオリオのことだ。



ふざけるなとまた殴りかかりに行きそう。



でも、ヒソカにはあとでお礼を言っとかないとね。



そう思ったときだ。



背筋をぞわっと冷たいものが這いのぼった。



ひょい、と首根っこをつかまれたのは同時。



「ひえっ!!?」



「ヒソカ!!」



「おい、ポーをどうするつもりだ!」



「どうもしないサちょっと話したいことがあってね。試験開始までには無事に返す。……キミたちが、ボクの邪魔をしなければね



「大丈夫、嘘じゃないと思うから。心配しないで」



「ポー……」



「……ヒソカ、約束だよ。もし破ったりしたら、俺、お前のこと大っっ嫌いになってやる!!」



「クックックックッ!それは困る……いいよ、約束だ☆」



そうして私は、人気のない林の中へ連れてこられた。



「……イルミに、念を教わることにしたって、本当?」



トン、と私の背を木の幹に押しつけて、ヒソカは単刀直入に聞いてきた。



「イルミ……」



「ギタラクルの本名☆彼、きっと自分からは明かさないだろうから、友達であるボクが、かわりに教えてあげとこうと思ってサ」



「……」



「どうして彼なのかな?彼自信のことを、キミはなにも聞いてないの?」



「殺し屋さんだって言ってました。それに、まだOKをもらったわけじゃないんです……少し考えさせてくれって」



「……どうやら彼、引き受けるつもりらしいよ☆さっき話したとき、そう言ってた」



「本当ですか!?やったあっ!!」



「ただし、それがキミの成長の為かどうかは知らない。彼、もともと家族以外の他人には、興味を持たないんだ。だから、彼の真意は不明だし、正直なところボクも驚いてる★」



「う……でも、もしギタ……イルミさんに殺すつもりがあるんなら、とっくに殺られちゃってる気がするんですよね。それをしないってことは、やっぱり、ちゃんと教えてくれるつもりがあるからじゃないのかなぁ……」



「ポー。キミさぁ」



珍しく、ニヤニヤ笑いを引っ込めると、ヒソカはかがんで私の顔を覗きこんだ。



「死にかかわる仕事を、してたのかい?」



「え?」



「さっきは気づかなかったけど、今のキミはそんな目をしているよ他のものの死を見つめ、自分の死を客観的に見つめることのできる目だ。やるかやられるかの命のやりとりを、日常的に見続けてきた冷静な眼差し……どうしてだろうねぇ、さっきはただの泣き虫さんだと思ったのに



「……話したかったことって、それですか」



うんと微笑む奇術師に、私はなんとも言えない気持ちになった。



「そうだなぁ……そう言われたら、そうかもしれないですね。私、海洋研究生なんです」



「カイヨウ……?」



「そ。海に潜って、そこに棲む生き物がなんでそんな風に進化したのか、調べる研究をしてました。専門は、軟体動物。つまり、柔らかい身体をもつ生き物ですね。イカとか、タコとか、クラゲとか。なかでも、私は捕食能力者専行のゼミに所属していて――」



「ちょっと待ったなるほど、確かにキミは研究者って感じがするなぁ。ナニかに夢中になると、止まらなくなるタイプ。でも今はあまり時間がないから、手短に答えてもらわないとネ



「捕食者の場合、相手を殺すというより、捕まえて食べるのが目的になりますけど、そういう瞬間は毎日見てましたね。生きるために殺すっていうなら、イルミさんはそうした生き物に似ています。だから、なんかちょっと親近感が湧く気がして。ほら、なんかこう、イカっぽいじゃないですか!」



「……ぷっ!



うひゃあ、ヒソカさんが爆笑してる。
なんか、戦闘以外で普通に笑ってるヒソカさんてレアだなあ……なんて思ってたら、遠くからカランカラン、と鐘のなる音が聞こえてきた。



「時間のようだネ。そろそろ皆のところに戻ろうか



「はい!ヒソカさん、ゴンとの約束守ってくれてありがとうございました!あ、あと、レオリオを運んでくれて……殺さないでくれて、ありがとう」



「どういたしまして……ポー」



「はい?」



くるっと振り向いたら、目の前にヒソカの顔があった。え、と思ったときには腕を引かれていて……。



ちゅ



「×→ц①×●:☆→①△←!!!」



「ククッ!やっぱりボク、キミのことが気に入っちゃったみたいだイルミに愛想がつきたら、いつでもおいで



去り際にハートのエースを投げて寄越した奇術師を、私はただ、真っ赤になって見送るしかなかった。