25 もとさや!×仲直り?×おいてけぼり!?

 

 

 

 

 

うーん。



もしかしたら選択を間違ったかもしれない。



でもそれは今でなく、もっと前に――



「ポー」



部屋に戻って、泣き腫らした顔を鏡で見ていたら、イルミに



「寝る前にシャワー浴びておいでよ」



と言われ。



素直にお風呂から上がってきた私は、つくづくそう思ったのである。



「どうしたの?はやくおいで?」



「……」



そこにはポンポン、と、ベッドに寝そべりつつ傍らを叩くイルミの姿が。



「あの……ここ、シングルベッド二つのツインルームだよね?気のせいかなぁ、この部屋にキングサイズのベッドなんてなかった気がするんだけど……」



「狭かったからくっつけた。でも、このサイズで調度良くない?俺の部屋のベッドもこれくらいあるけど?」



このブルジョワが!!!



暗殺家業ってそんなに儲かるのかなぁ……?



「……まあいいや。一緒に寝るのはいいけど、変なことしないでね?」



「変なことって?」



「イルミ……!」



わかったよ、と、しれっと答える確信犯。



「ポーが嫌がるならしない」



「嫌がるかどうか試すのもやめてね。っていうか、今もハンター試験の真っ最中なんだって分かってる?」



危うく私も忘れかけてたけど。



「わかってるよ。だから早く寝て休まなきゃいけないだろ。睡眠をとるのは大事だよ?」



「はいはい……」



ちゃんと眠れるかどうか不安だけど……。



もぞもぞと布団に潜り込むと、イルミの腕がのびてくる。



電気を消した暗闇の中で、思いのほかやさしくあたまを撫でてくれるのが、なんだかむず痒くって、でも幸せで。



気づけば、文句を言う気持ちも失せていた。



とろとろと、闇と一緒に瞼が落ちてくる…… 。






       ***







翌朝。



「え!?飛行船、なくなっちゃったの!!?」



「うん!そうなんだ。昨日の夜中に、ジナーとバナーが乗ってっちゃったんだよ」



「つーか、なんで気づいてないんだ、ポーは!あんなにでっかいエンジン音で起きないなんて相当鈍いぜ?」



「だ、だって……」



くそう……イルミめ。



変なことしないって言ったくせに。



嫌がるならしないって言ったくせに。



嫌がるかどうか試すようなこともやめてねって釘まで刺したのに……!!



イルミのバカ―――っ!!!



「疲れてたんだもん!!!」



「なに赤くなってんだよ。風邪でもひいたのか?」



……はあ。



まあ、いいや、ひとまず忘れとこう。
えーと、まずは現状把握!



飛行船がなくなって、私たちはみんなそろってこの島に置いてきぼりにされてしまったみたいだ。



ホテルには食料もなく、今後のことも、これがどういった試験なのか、そもそも試験なのかもわからない。



唯一の手掛かりは、オーナー室に残っていた次の試験会場、ゼビル島への地図一枚。



ゼビル島に行くべきか、ホテルにとどまるべきか、みんなは騒ぎ始めた。



「ヒソカさーん!ギタラクル―!!」



甲板を見下ろせるデッキにほおづえなんかつきながら、端から傍観を決め込んでいる二人のもとへ、ててっと走っていく。



「ホテルに残って現状把握する組と、今すぐゼビルに向かって出発する組に分かれてるみたい!二人はどうする?」



「そうだなぁ……☆ちなみに、ポーはどうするの?」



「残る。ただ置いていくだけのつもりなら、わざわざホテルのある島にしなくても、無人島でもいいわけだし。しかも、戦艦を改造したホテルっていうのがひっかかるんですよね……ゼビル島に向かうって言っても、この島のまわりは暗礁も多いし、潮の流れも速い。出発組は難破したボートや船を利用するつもりらしいですけど、正直、海をなめてるとしか言いようがありませんよ全く!!さっき、ハンゾーさんと一緒に散々説得したのに聞く耳もたないし……」



「わかった、わかった。残るよ☆海のことに関しては、ポーに逆らったら後が怖そうだ」



「カタカタカタカタ……(じゃ、俺もそうしよっと)」



「よかった!あ、そうだ。この戦艦、エンジンが生きてるらしくって、いまからゴンとキルアと探検に行くんですけど、来ませんか?」



「それは遠慮しておく☆楽しんで来なよ」



「カタカタカタカタ……(ポー、わかってると思うけど……)」



「わかってますって、キルアには内緒なんですよね……うわわっ!!?」



うっかり敬語を使った瞬間、イルミの手が消えてエノキが二本、目の前に……!!?



「――っ!!」



でも。



でもでも、いつもみたいにスココーン!!



とはならなかった。



よっしゃああああ!!!



こんなこともあろうかと、常時の纏をしている状態で物に当たると、自動的に“驚愕の泡(アンビリーバブル)”が発動するように練習しておいたのだよ!!



エクセレント!!



「やったあ成功……っていやあああああああ――っっ!!!!!」



「カタカタカタカタ……(ばかだなー、ポーは。避けたあとが隙だらけになるんだもんなー)」



「………☆」



数十本の針の応酬を、しかし、なんとか避けきった!







       ***









「今のが、ポーの能力?なんだか、彼女を包む風船みたいなのが見えたけど☆」



「カタカタカタカタ……(うん。さっき海の中にいたときも使ってた。本人は無意識だったよ。あの中にいると水中で息もできるし、話も出来る。海のオーラにとけこんで、正確な位置を把握するのは難しい」



「それで昨日、20分以上水の中にいても平気だったんだね☆陸上ではああやって、敵の攻撃から身を守るのに役立つ訳か☆なあんだ、やっぱりポーは防御系の念能力者か。残念……★」



「カタカタカタカタ……(本当にそうかな……)」



「というと?」



「カタカタカタカタカタカタ……(昨日の夜、ポーにキスしたときに殴られたんだ。平手打ちだったんだけど)」



「打たれてあげたんだ☆」



「……」



「イルミ?」



「カタカタカタカタ……(ううん。俺、確かに避けたんだけどな。避けたはずなのに、気がついたら張り倒されてた。けっこう痛かったよ)」

 

「……それ、本当?」