24 恋愛?×相談?×ヒソカ先生!?

 

 

 

 

 

 

ダダダダダダダダ!!!!!



バンッ!!



「ヒソカさああああんっっ!!!!」



「おや☆どうしたんだい、血相変えて」



「おい、あんた!ノックもせずにひとの部屋に無断で――」



練っ!!!!!!!!



「ひいっ!!?」



「コラコラ☆あんまりザコを苛めちゃだめだよ?でもキミ、邪魔だからちょっとはずしてくれるかな……?」



「ひ……ひえっ!!」



ヒソカが睨み付けるか否か、トンパは転がるように部屋を飛び出し、猛スピードで廊下の闇へと消えていった。



「さて☆これでお邪魔虫はいなくなった。それで?そんな顔してどうしたの」



「………………イルミが」



ぐっと唇を噛みしめる。



するとヒソカはベッドの上でトランプを積む手を止め、ああ、とでもいうように眉を上げてみせた。



「それで、逃げてきたんだ☆」



「もうなんか訳がわからなくて~~!!!!」



うえええん、と空いている方のベッドに突っ伏す私。



頭の中はまだまだパニック状態。



なんでああいうことになったのか、どういうつもりであんなことをしてきたのか、イルミがなにを考えているのか、なに一つ分からない。



「訊いたらいいじゃないか☆なんで?ってさ」



「訊きましたよ……!!」



「訊いたんだ☆それで、彼はなんて?」



「………………………………………………………………『なんとなく』」



「あらら……★」



しかも、そのすぐ後に、



『あれ?嫌だった?』



と、くりんと小首を傾げたりするものだから、ついに堪忍袋の緒が切れた。



ブッツリと。



あのイルミの横っ面に、こともあろうかビンタを叩き込んでしまったのだから、部屋を飛び出すしかない。



うう……もう当分顔合わせられない。



「というわけで、今夜はここで泊まらして下さい……!!」



「それは構わないけど……☆あんまりボクを信用しないほうが――」



「わあああん!!!イルミのばかあああああ―――!!!!」



「……☆」



まあいいや、と崩れてしまったトランプタワーを一から作り直しにかかるヒソカである。



さりげなくそっとしておいてくれるあたり、大人だなぁ……。



しばらくベッドにつっぷしてえぐえぐ泣いていた私は、ふと顔をあげて、思ったことを口にしてみた。



「……………あの、ヒソカさんは……イルミとは長い付き合いなんですか?」



秘密☆



と言われてしまったら、諦めようと思っていた。それぐらいの気持ちだった。



「そうだなぁ……」



でも、気紛れな奇術師は答えてくれるつもりらしかった。



急かしたりせず、黙って待った。



「かれこれ……10年前になるかな☆彼、初めて会った瞬間からボクを殺ろうとしたんだよ。ターゲットだったんだって☆」



「し、衝撃的な出逢いですね……」



「そう?ボクにとっては、そんなに珍しいことじゃなかったんだけどね☆イルミはそれまで会った誰よりも強かった。無駄がないっていうか、要するに、殺しにしか来なかったんだ」



「そっか。ヒソカさんは闘いを楽しみますもんね。塔で、囚人相手に闘ってる姿を見たとき、そんな風に感じました」



「そうそう☆でも、イルミは違うよね。彼にとって、殺しはお仕事。闘うのは、殺すためだ。それは、今も昔も変わっていない」



「……」



「目も、魂も、考え方も、身内以外の他人や自分への無関心さも、イルミは変わらない☆変化があったとすれば、殺しの技術や強さかな。それ以外は、何年付き合っていても、イルミはイルミだと思ってた☆」



「……」



「それを、たった数日であれだけ変えちゃったのはキミだよ?ポー。だから、ちゃんと責任とってね☆」



「え……!!?」



「クックックック……ッ!!」



ま、無理強いはしないけどね☆



それとなく、トランプをちらつかせつつ、ヒソカは笑う。そして、ふいに私をのぞきこんだ。



「ポーは、イルミが好きなの?」



「……はい」



なんだろう。



隠したくなかった。



はぐらかしたくなかった。



気紛れでも、私の聞きたかったことを――言葉に出来なかった問いにまで答えてくれた、このひとに、嘘なんかつきたくなかった。



「好きです。暗殺者として生きてきた、イルミが好き」



「妬けちゃうなぁ……☆でも、ならいいじゃない。キスくらい、いくらでもしちゃいなよ☆」



「う……で、でも、イルミが私のこと好きかはわかんないじゃないですか!」



「言っただろ?イルミは昔から、身内以外のことには無関心。殺せるか殺せないかでしか判断しない★そんな彼が、キミに興味を持った時点で普通じゃないよ☆言葉にするには時間がかかるかもしれないけど……観察するのは得意だろ?」



「う……はい」



「いい子だ☆じゃ、話はオシマイ。早く部屋に戻りなさい☆」



「え――っ!!!」



「ポー。今すぐ円を教えてあげようか☆纏を行ったら外側に意識を広げていくんだ……ドアの向こうに誰がいる?」



「!!!!????」



いってらっしゃい☆



有無を言わさぬ笑顔で(いや、たぶん念も使ってるに違いない)私を追いやるヒソカを涙目でにらみつつ、



「……行ってきます」



行くしかない私なのであった。



 カチャ。



「や」



「……イルミ。さっきは、ひっぱたいてごめん」



「いいよ。俺もごめん。ポーが、実は俺よりヒソカのことが好きだったなんて知らなかっ」



「それはないから!!」



「そうはっきり言われると傷つくなぁ★」



淡々と恐ろしいことを!!!!



「そうなの?」



「そうだよ……ちょっと相談にのってもらってただけ」



「ヒソカは相談になんてのれないよ?」



「えっ!?そんなことなかったけど」



バッチリしっかり恋愛相談してましたが???



イルミはくりっと首を傾げた。



「そうなの?」



「そうなの☆」



「そうなんだ」



ふーん。



立てた人差し指をほっぺにあてつつ、



「変わったね」



「キミが言うなよ☆」



「まあね。それより、ポー」



「えっ!」



「まだここにいるつもり?それとも部屋に戻る?」



「も、戻る……」



「わかった」



じゃ、行こう。



そう言って差し出してくれたイルミの手のひらを、初めて握りしめた。



暗殺者の手のひらは、大きくて温かい。






       ***







「………いいなあ☆」



おいてけぼりになった奇術師は、独りでぽつんと呟いたとかなかったとか。