ヒソカと手を繋いで(さっきみたいに落っこちかけたらいけないからね☆という強要による)、次の試練の行われる部屋に入った私は、飛び込んできた光景に愕然とした。
イルミが闘っている!!
といっても、相手は人間じゃない。
壁や天井、床にとりつけられたレーザーだ。
イルミは上体をそらしたり、捻ったり、まるで踊るようにしながら全ての攻撃を避けているけれど、道は万華鏡のように鏡張りになっているから、一度放たれたレーザーは鏡面に反射して何度もイルミを襲う。
これじゃとても前にすすめない!
「イルミ!!」
「ふうん。恐らくこの壁だけマジックミラーになってるんだねぇ☆向こうからはこちらの様子は見えないんだ☆それは好都合……☆」
すかさず後ろから抱きしめてくる変態ピエロを、肘鉄で撃退。
「やってる場合ですか!!イルミが……イルミが穴だらけになって死んじゃう……!!!」
「だ……大丈夫☆こんなの、彼にとっては日常茶飯事だから」
「でも!!」
「見ててごらんよ☆」
ほら、とヒソカの指先を見ると、レーザーの放射孔にエノキが生えている。
イルミの針だ!
「あんなの、レーザーで溶けちゃうんじゃ……」
「ああいう機械は、かなりデリケートなんだよ?空調の完備された、限られた空間でないとまず正確に作動しないしね☆でも、もったいない。あれ1つ何億って値段がしそうなのに☆」
嬉しそうにヒソカが言った瞬間、全てのレーザー攻撃がやんだ。
プシュー、とゴールの扉が開く。
……どうやら、これ以上高額の備品を壊されちゃ堪らないと踏んだらしい。
「それなら最初から使わなきゃいいのに……」
「全くだ★」
***
「や」
試練の路から休憩室……と化している拷問部屋に入ってきたイルミに、ヒソカはおつかれ☆と振り向いた。
「……何してるの?」
「ん?いや、ポーが鞭の打ち方を知りたいって言うから、教えてあげてたんだよ☆」
「ふーん。なんで?」
「知らない☆」
ビシュッ!!
手首の捻りを加えるタイミングが、やっと掴めてきた。
これならいける!
鞭の先が遠くの棚にあるナイフの1つに巻きついて、正確に手元に戻ってくる。このイメージ……。
「お見事☆さっき教えてあげたばかりなのに、もう十発十注でとれるようになったね☆じゃあ、次はいよいよ犬やブタや奴隷のいたぶりかたを……」
「それはいいです」
スパッと切り捨て、
「イルミ、次の試練は私にいかせて?」
「ほんとに行くの?まだ発の能力は完成してないんだろ。俺かヒソカが二回行ったって構わないんだよ?」
イ、イルミが優しい……。
「なに、この手」
「熱でもあるんじゃないかっていでででででっ!!!」
失礼だなーと間延びした声で言い難ながら、なおもイルミは私のほっぺたをつねりあげる。
「ぎゃあああああ!!」
「中途半端で死んで欲しくはないんだよ。今ポーが死んだら、結局、どんな能力だったんだろうって、ますます気になるじゃない」
「結局それかい!いいのっ、行くって言ったら行くんだから。さっきから試したいこともあるし」
「試したいこと……ねぇ☆もしかしてその鞭も関係してるのかな?」
勿論。
うなづくと、ヒソカは益々笑みを深めた。
「楽しみだなぁ☆ねぇ、イルミ。ポーに行かせてあげようよ。どんな力を見せてくれるのか、スゴく興味がある☆」
「しょうがないなあ」
いいよ、行っておいで。
背中を押してくれたイルミに、私は心からありがとうを言った。